第92章 妖斬り司

蘇乗羽の最初の反応は誘拐だった。そして犯人は、林家の墓を荒らし、林家を密かに害した犯人に違いないと思った。

蘇乗羽は急いで追いかけたが、相手の速度は非常に速く、手足を使った動きは人間のものとは思えなかった。蘇乗羽は距離が開いていくのを見て、このままでは追いつけないと悟った。

仕方なく、車に戻り、林初雪のトランクから残っていた朱砂黃紙を取り出し、筆を振るって符を描いた。

疾風の札!

この符は高度なものではなく、蘇乗羽の境界では一筆で描けた。蘇乗羽は二枚の疾風の札を描き、足に貼ると、たちまち身が軽くなり、足元が風を踏むかのように感じ、速度が劇的に上がった。

疾風の札は補助的な符籙で、短時間の加速しかできない、やや物足りないものだった。

現在の蘇乗羽の境界ではまだ十分な高さがなく、符を描くには黃紙と朱砂を借りて符術の力を凝縮する必要があった。築基境の修真者なら、直接霊力で符を凝縮できるのだが。