第238章 共倒れ

目の利く者なら誰でも見て取れるように、任千重はすでに劣勢に立たされていた。洪鎮亭が焦らないはずがない。

任千重はすでに彼の切り札だった。もし任千重が敗れて殺されれば、彼自身も危機に瀕することになるだろう。蘇乘羽は必ず彼を殺すだろう。

再び蘇乘羽に押し返された任千重は、大声で叫んだ。「武器を!」

観客席で、吳青豪は任千重の箱を力強く投げ下ろした。任千重は飛び上がって箱を受け取り、開けて武器を取り出した。それは一対の鉤鎌杖だった。

杖は十八般の武器の一つだが、比較的マイナーで、使用する人は少ない。

任千重の双杖は先端が鉤状で、鎌のようであり、底部は短い杖のようになっていた。二本の杖を組み合わせると、実に精妙だった。

蘇乘羽は斬龍剣を取り出さず、代わりに短剣を抜いた。

「蘇乘羽、私は長い間誰とも本気で戦っていなかった」

任千重は鉤鎌杖を手に取り、戦闘力が一段階上がった。

「人と本気で戦わないから、お前の実力は停滞し、追い越されるのは時間の問題だ。年を取ったら、それを認めるべきだ」蘇乘羽は皮肉を込めて言った。

「死ね!」

任千重は足取り軽く、積極的に攻撃を仕掛け、双杖を翻して目まぐるしく動かした。

蘇乘羽の短剣は、鉤鎌杖の前では少し不利に見えたが、蘇乘羽も自在に操り、金属と鉄が激しくぶつかり合い、火花が散った。

「驚いたな、蘇乘羽は本当に任宗師と互角の実力を持っているとは。今日の勝負は予測不能だ」

「霖江の第一高手が、本当に交代するのだろうか?」

観客席には当然、多くの練武の人がいた。この決闘では、皆が予想していたような蘇乘羽が圧倒される場面は現れなかった。

現在の状況は、確かに勝負の行方は予測不能だった。

林初雪と方晴はお互いの手をしっかりと握り、目を離さずに見つめていた。方晴は練武の人だったので、見ながら林初雪に解説していた。

この時、蘇乘羽はすでに優位に立っており、林初雪もようやく少し安心した。

一方、洪鎮亭の隣に座っていた許南枝は、この時、任千重が敗れた後、蘇乘羽がどのように洪鎮亭を処分するかを考えていた。

任千重は洪鎮亭の側近の中で最も強い人物であり、任千重を殺すことは洪鎮亭の牙と爪を抜くようなものだが、洪鎮亭はやはり猛虎だった。

彼の背後には黒龍商会という巨龍がおり、それは簡単に手を出せるものではなかった。