第63章:2階を突破し、趙興は山に登る

「んっ…」陸倩は昏睡から目を覚ました。

趙興がここにいたら、きっと褒めただろう。さすが魅惑法術を使う幻舞者だ、目覚めの寝言さえも魅惑的だと。

陸倩は気づいた。あの約束を破った嫌な男はもういなくなっていた。

時間を計算すると、一時間ほど気を失っていたようだ。

まず体を確認すると、幸い辱めを受けた形跡はなく、ほっと胸を撫で下ろした。

すぐに怒りが込み上げてきた。「ひどい男!私の朱果を奪い、法衣を盗んで、約束を破って私を見捨てるなんて。やっぱり男なんて一人も信用できないわ!」

「ふん」暗い森の中から、嘲笑うような声が聞こえてきた。

「誰?!」陸倩は即座に警戒し、茂みの方を見た。

そこには草人が一体あり、音を立てた後に輝きを失った。

「あの人?意外と約束は守るのね」陸倩は我に返り、つぶやいた。「今度あなたが私の手に落ちたら、私もあなたの物を奪って、そして見逃してあげる…」

...........

趙興が去ったのは一刻前のことだった。彼が草人を残し、陸倩を見捨てなかったのは、同情心からでも、約束を守る頑固さからでもない。

主に東湖山には陰神界の監視があり、官吏の一挙手一投足が見られているからだ。

陸倩の命を助けると約束しておきながら、森で野獣に食われるままにするのは、趙興の登山にとって不利になる。

山には山神廟があり、利益を得たければ、守護神の機嫌を損ねてはならない。そうでなければ、得るものより失うものの方が大きくなってしまう。

「ここで休もう」

趙興は一時間歩いた後、岩窟を見つけた。

まず大力金剛術で偵察させ、異常がないことを確認してから中に入った。

その後、草人たちを洞窟の入り口周辺に配置して見張りをさせた。

さらに巨石を数個運んで、洞窟の入り口を塞いだ。

これでようやく安心して休むことができた。

趙興がこれほど慎重なのは、朱果を服用するつもりだからだ。

「下級霊秀は、壽命霊秀と呼ばれ、壽命と元気を増やす」

「この朱果は私にとって、上品の気運霊秀よりも重要だ」

趙興が最も渇望しているのは、壽命を増やす宝物だ。

なぜなら、将来の復興期まで生き延びるのは困難だからだ。さらに壽命の増加には限界があり、早く手に入れれば入れるほど良い。