その瞬間、李追遠は頭から氷水を浴びせられたかのように、全身が冷たくなった。
ぼんやりと、自分の魂が体から抜け出しそうになった気がした。抜け出さなかったのは、ここが現実ではなく、自分の体がここにないからだ。
「逃げろ!」
李追遠は秦璃の手を引いて立ち上がり、走り出した。
しかし、数歩も進まないうちに、先ほどまで砂で皿を洗っていたお婆さんたちが、一斉に前に立ちはだかり、道を塞いだ。
彼女たちの一見干からびて年老いた体は、李追遠がどれだけ押しても突き飛ばそうとしても、びくともしなかった。
絶望の中、李追遠の頭に浮かんだ考えは意外にも:なるほど、曾祖父の紙人形ビジネスが繁盛しているわけだ、材料と作りの良さは確かにここに表れている。
実際、強行突破に望みはなかった。まだ幼く、力もない彼には、曾祖父や劉金霞のような術は一つも使えなかったのだから。
彼は最初、隠れることでこの事態を切り抜けられると思っていた。そしてほとんど成功するところだったが、最後の一歩で台無しになってしまった。
彼は振り返って猫顔お婆さんを見つめ、自分を落ち着かせようと努めながら、使えそうな知識を急いで思い出そうとした。
あまり探す必要もなかった。彼が読んだのは一冊の本だけで、それも入門レベルの百科事典だった...しかも4巻しか読んでいなかった。
まさに読書は必要な時に足りないことを痛感するものだが、今は持っている知識だけで何とかするしかなかった。
すると、李追遠は実際に使えそうな情報を一つ見つけ出した。
「江湖志怪録」第三巻第十二篇には、特殊な死倒の一種である屍妖について記されていた。
深い怨念を持った人が水中で漂っているとき、同じく邪な気を持つある動物の死体と接触し、偶然の巡り合わせで、両者が融合して人でも妖でもない奇妙な存在となる。
この種の死倒は特殊な能力を持っており、例えば本に記載されている屍妖は東北長白山一帯に出現し、人と黄大仙が結合したもので、迷瘴を張り、人心を惑わす能力があったが、最終的に正道によって滅ぼされた。
この「正道」が何を指すのか、李追遠にはわからなかったし、知る必要もないと思った。なぜなら、どの死倒の結末も「正道によって滅ぼされた」で終わっていたからだ。