空海は立ち止まった。
彼は確かに金光が一筋閃くのを見た、遠くない場所で。
しかし白い霧が視界を遮り、誰なのか見えなかった。
「道門の強者か、それとも仏門の高僧か?」
空海は少し驚いた。
度化金光を凝縮できる存在は、晉國全体でも指折りほどしかいない。
修士が度化金光を凝縮するのは、極めて難しい。
まず千の功德の力を凝縮しなければならない。この千の功德の力は、千の怨魂を斬殺すれば得られるというものではない。
真の度化が必要なのだ。空海は十五年の歳月をかけても、六百七十余りの功德の力しか凝縮できていない。
千の功德の力を集めるにはまだ距離があり、たとえ千の功德の力を凝縮しても、仏門金身を形成し、その後に度化金光を養うことしかできない。
だから度化金光を持つ存在は、皆得道の高人であり、真の得道の高人なのだ。
金光が普く照らし、怨念を洗い流す。
臨河鬼墓では最近動乱が起きていた。しかし、ただの動乱だけで、寺院の高僧は臨河鬼墓の封印が少し緩んでいると考え、彼に調査を依頼したのだ。
鬼王が復活でもしない限り、得道の高人が来ることはないはずだ。
「おそらく先輩なのだろう。残念ながら、私は動けない。ここにはまだ二人の施主がいる。もし私が離れれば、必ず鬼修が彼らを襲いに来るだろう」
空海は少し辛かった。彼はこの得道の高人に会いたかった。
しかし葉平と蘇長御が傍にいることを考えると、離れる勇気が出なかった。自分が去れば、鬼修たちに隙を突かれることを恐れたのだ。
そしてこの時。
白い霧の中に、孤魂野鬼の一群が集まっていた。
「どうして藍兒と楊文はこんなに長く戻ってこないんだ?」
「そうだな、もう半刻も経っている。これ以上引き延ばせば、陣法術が消えてしまったら厄介だぞ」
「彼らは危険に遭遇したのではないか?」
この孤魂野鬼の群れは二、三十ほどで、臨河鬼墓では小さな勢力だった。普段は単独の修士を捕まえて、その陽気を吸収していた。
「ありえない。あの二人は練気修士に過ぎない。楊文と藍兒は少なくとも鬼兵大圓滿で、練氣圓滿と同等だ。あの僧侶に出くわさない限り。しかし私は仏法の力を感じていない」
首領の男がそう言い、非常に確信に満ちた口調だった。
「大人、あの二人が豚を装って虎を食らう戦術を使っているのではないでしょうか。見かけは練気境でも、実際は築基修士で、私たちを誘い出そうとしているのでは?」
「そうでなければ、二人の練気修士が、しかもその一人は練気二層で、臨河鬼墓に来る勇気があるでしょうか?」
一人の怨魂がそう言い、非常に好奇心に満ちていた。
この言葉を聞いて、他の野鬼たちも思わず立ち止まった。
よく考えてみると、確かにその可能性はあった。
「ありえないだろう。臨河鬼墓には百万の怨魂がいる。私たちを騙せたとしても、他の悪鬼は騙せない。それに、たとえそうだとしても心配する必要はない」
「私はすでに鬼士境に突破している。たとえ彼らが築基完成期の修士だとしても、私には敵わない」
「まさか彼らが度化金光を凝縮できるとでも?」
この野鬼の頭目は自信に満ちていた。彼は鬼士境の修士で、修士の築基境と同等だった。
さらにここは臨河鬼墓で、彼らにとって先天的な加護がある。
同じ境界での戦いなら、たとえ負けたとしても相手に殺されることは絶対にない。だから彼は何も恐れることはなかった。
そのため、鬼修たちは次々とうなずいた。
確かに、葉平と蘇長御が豚を装って虎を食らうとしても、どうということはない。
まさか金丹が練気を装うとでも?
それは基本的にありえないことだ。それに金丹真人がこんな場所に来るはずがない。
まさか本当に度化金光を放てるとでも?
鬼修たちが考えを巡らせているその時。
突然、声が響いた。
「来た、来た!」
声が響くと、怨魂たちは一斉に気を引き締めた。
果たして、見覚えのある姿が、鬼たちの目に映った。
その瞬間、これらの怨魂は一様に興奮を隠せなかった。
「動くな。もう少し近づかせろ。あの臭い坊主に邪魔されないように」
「それに直接殺すな。まず怖がらせろ。魂も魄も飛び散るほど怖がらせれば、陽気を吸収しやすくなる」
この孤魂の頭目が口を開き、怨魂たちに興奮を抑えるよう、葉平がもう少し近づくまで待つよう命じた。
「親分、安心してください。必ず魂も魄も飛び散るほど怖がらせてみせます」
「へへへ、やっと人が来たんだ。ゆっくり楽しまなきゃな」
「そうだな。この奴が前回の奴みたいに、俺たちに驚いて即死しないことを祈るぜ」
この野鬼の群れは笑いながら、非常に興奮した様子で、待ちきれない様子だった。
そして遠くでは。
葉平は飛び剣を握り、表情は非常に憂鬱そうだった。
彼は本当に憂鬱だった。
ここは臨河鬼墓のはずなのに、一炷香の時間近く歩いても、一匹の孤魂野鬼にも出会えていない。
鬼はどこだ?
どこへ行ったんだ?
みんな死んでしまったのか?
葉平は非常に辛かった。せっかく超度の法を学んで、功德を稼ごうと思ったのに、一匹の鬼にも出会えていない。
この感覚は非常に辛く、葉平には言い表せないものだった。
そう考えると、葉平は怨念を抱いてしまった。
しかしその時、突然、葉平は立ち止まった。
太上度化經は、亡魂を度化するだけでなく、怨念も度化できる。
自分が今怨念を抱いているが、それを度化できるのではないか?
もし自分で自分を度化できれば、功德は得られるのだろうか?
もし功德が得られるなら、それは自給自足ができるということではないか?
そう考えて、葉平は頭を叩いた。天灵盖から淡い金色の光が体内に入っていった。
これが度化金光だ。
次の瞬間、言い表せない感覚が現れた。
まるで聖賢モードに入ったかのように、すべての悩み、プレッシャー、憂鬱が消え去った。
唯一残念なのは、功德が得られなかったことだ。
しかしこの感覚は良かった。悟りを開いたような感覚があり、人を自然と幸せな気持ちにさせた。
「功德の力は得られなかったが、自身を明悟の状態に導き、智慧を開き、悩みを消すことができる。これも悪くない」
葉平は自己評価をした。
功德の力は得られなかったが、悩みを消すことができる。なかなか良いではないか。
しかし、葉平が考えを巡らせているその時。
突然、陰風が吹き寄せてきた。
その瞬間、低く掠れた声が響いた。
「私は......ひどい死に方を.....したのです」
声は極めて低く、哀嘆を帯びており、聞くだけで人の背筋が凍るようだった。
この瞬間、葉平は立ち止まった。
黒い霧が次々と現れ、惡鬼となって、無頭鬼、斷肢鬼、そして血に染まった怨魂たちが、見るに堪えない姿で現れた。
陰風が吹き荒れ、哀嘆の声が響き、数十の怨魂が地を這い、怨気滔々と葉平を見つめていた。
これらの怨魂は、すでに'間抜け'のように立ち尽くす葉平を見て、心の中で大笑いし、葉平がすでに恐怖で呆然としていると思った。
彼らはこの恐怖を楽しんでいた。
しかし次の瞬間。
葉平は我に返り、その目には......喜びの色が浮かんでいた。
え?
喜び???
鬼たちは呆然とした。
これはどういう意味だ?
恐怖のはずではないのか?
なぜ喜びの色を浮かべているのだ?
怨魂たちは少し困惑した。
そして我に返った葉平は、確かに喜びに満ちた表情をしていた。
彼は一炷香の時間探しても一匹の怨魂も見つけられなかったのに、突然数十の怨魂が現れたのだ。
これを喜ばずにいられようか?
「私は無念の死を遂げたのです」
「私はとても苦しいのです」
「私はとても辛いのです」
そしてこの時、血に染まった怨魂の一つが葉平の足元に来て、彼の足首を掴み、目には怨みと諦めきれない思いが満ちていた。
これは吊死鬼で、首には青い絞められた跡があった。
吊死鬼は葉平をじっと見つめ、葉平のこれからの反応を期待していた。
しかし次の瞬間、葉平は直接しゃがみ込み、慈悲に満ちた表情で吊死鬼に尋ねた。
「本当に苦しいのですか?」
葉平は慈悲に満ちた声で尋ねた。
声が響き、吊死鬼は思わず呆然とした。
どういう意味だ?
なぜ苦しいかどうか聞くんだ?
私を超脱させようというのか?
兄貴、真面目にやってくれないか?私は鬼なんだぞ。
普通の人の反応をしてくれないか。
一回泣いてみせてくれないか?
吊死鬼は心の中で文句を言った。
しかし心の中で文句を言いながらも、吊死鬼は非常に悲惨な様子で葉平を見つめて言った。
「そうです、私はとても苦しいのです。私を救ってはくれませんか」
吊死鬼の言葉には悲惨さが満ち、目には毒々しい色が浮かんでいた。
しかしこの瞬間。
葉平の声が、彼の耳元で響いた。
「大丈夫です。すぐに苦しみから解放されますから」
声が響いた。
吊死鬼が反応する間もなく。
一筋の金光が葉平の手のひらに現れた。
その瞬間、怨魂たちは呆然とした。
度化金光?