第八十章:
「助けて!鬼を殺す者がいる!」
悲鳴が響き渡り、蘇長御と空海は思わず遠くを見やった。
一つの鬼影が現れた。
慌てふためいて二人の方へ走ってきた。
その後ろには見覚えのある姿が追いかけていた。
葉平だ!
蘇長御は目を見開いた。
七日間探し続けても葉平が見つからず、蘇長御は焦りまくっていたが、今、葉平が無事な姿を見て、蘇長御の胸のつかえが下りた。
しかし.......なぜ自分の師弟が鬼を追いかけているのだろう?
「道友よ、怖がらないで、ちょっと痛いだけだよ。転生できるんだから、お得じゃないか」
葉平の声が響き、彼は後ろから追いかけていた。
そして金光が放たれ、その鬼修はさらに悲痛な叫び声を上げた。
「度化金光?」
葉平が度化金光を放つのを見て、遠くにいた空海は完全に呆然とした。
度化金光?
彼がどうして度化金光を持っているはずがある?
私の目の錯覚だろうか?
空海は呆気にとられた。
度化金光を見たことがないわけではないが、こんなに若い人が度化金光を持っているのを見たことがなかった。
そして遠くで、度化金光に打たれた鬼修は、凄まじい悲鳴を上げ、瞬く間に白い光となって消えていった。
最後の鬼修を片付けると、葉平は思わず笑みを浮かべた。
しかしすぐに、蘇長御の姿が現れ、葉平は思わず喜色を浮かべた。ここで大師兄に会えるとは思わなかったのだ。
「大師兄!あなたもいらしたのですね」
葉平は蘇長御を見るや否や、飛びつくように駆け寄り、目に喜びを満たしていた。
「師弟よ、この数日間どこへ行っていたのだ?師兄がどれほど心配していたか分からないのか?」
無事な葉平を見て、蘇長御はようやく安堵の息をついた。
もし葉平に何かあったら、本当に申し開きができなかっただろう。
しかし幸いなことに、葉平は無事だった。
おそらく七日間心配し続けていたせいで、蘇長御は葉平が先ほど放った金光が何なのかを気にも留めなかった。結局のところ、葉平が無事であることが何より良かったのだ。
金光がどうのこうのは、自分には関係ない。無事なら良いのだ。
「大師兄、あなたが度化の法を教えてくださった後、突然いなくなってしまい、私はどこへ行けばいいか分からず、やむを得ず鬼魂の度化に行きました。時間を忘れてしまい、申し訳ありません」
葉平は頭を下げ、蘇長御の叱責を聞いていた。
「度化の法?」
蘇長御は驚いた。
私はいつ度化の法をお前に教えたというのだ?
お前の天賦の才と悟性が良いのは分かっている。
でも無いものを作り出すのは止めてくれないか?
蘇長御は少し困惑した。
葉平の才能が非常に優れているのは知っていた。
しかし今はますます常軌を逸してきており、もう無いものを作り出し始めていた。
蘇長御が心中で憂鬱になっている一方で、空海はまだ呆然とした状態のままだった。
彼はほぼ確信していた。葉平が放った金光は、間違いなく自分が切望していた度化金光だと。
これはマジで常識外れだ。
目の前の二人は、どう見ても二人とも役立たずなはずなのに。
どうして度化金光を放てるのだろう?
もしかしてこの二人はずっと演技をしていたのか?
豚を装って虎を食らう?
待てよ!
突然、空海は何かに気付いた。
彼は蘇長御に目を向けた。
見れば見るほど、何か変だと感じた。
まず第一に、修為が平凡な二人が、どうして臨河鬼墓に現れることができるのか?
道を間違えたのだろうか?
そんなことがあり得るのか?
臨河鬼墓とはどんな場所か?築基修士でさえ軽々しく踏み入ることはできない。
誰が自分の命を賭けて冗談を言うだろうか?
第二に、練気境の修士が、鬼修に出会っても少しも慌てず、この七日間、蘇長御は自分について葉平を探し、まるで何かを頼みにしているかのようだった。
これは練気修士がとるべき態度だろうか?
そこで以上の全てを総合して、突然、空海は悟った。
この二人は豚を装って虎を食らっているのだ。
なるほど!
なるほど!
私は彼らの修為が弱いと思い、手を貸してやったのに、彼らは私を馬鹿にしていたのか?
師匠の言う通りだ、道門の弟子は本当に見栄を張るのが好きで、みんな深く隠している。
腹が立つ。
空海の心は憤りで一杯だった。自分は道門の弱者を助けることで、仏門の慈愛の精神を示そうと思っていた。
しかし思いがけないことに、二人の見栄っ張りに出会ってしまった。
これでは空海が気分を害さないはずがない。
しかしすぐに、空海も重要な点に気付いた。
済度の法?
どんな済度の法が度化金光を凝集できるのか?
その時、空海は気を引き締め、意を決して尋ねた。
「葉施主にお尋ねしますが、先ほどあなたが放たれたのは度化金光でしょうか?」
空海は葉平を見た。
しかし見なければ良かった、見た途端に空海はまた呆然とした。
なんてこった?練気十層になっている?
こんなに常軌を逸していいのか?
たった七日会わなかっただけで、もう練気十層になっているとは?
葉平は七日前にはまだ練気三層だった。
瞬く間に練気十層になっているとは?
彼は築基修士として、当然一目で二人の境界を見抜くことができた。
低い境界の修士は高い境界の修士を見抜けないが、高い境界の修士は低い境界の修士を一目で見抜ける。
だからこそ空海はこれほど衝撃を受けたのだ。
考えてみれば、七日前はまだ練気三層で、七日後には練気十層。
一日に一層上がっているということか?
これはおかしくないか?
施主よ、この貧僧の忠告を聞いてくれ。もうやめておけ、チートはよくない。封神榜に載せられるぞ。
空海は内心、何を言えばいいのか分からなくなっていた。
葉平から受けた衝撃は、まさに重なりに重なっていた。
彼は確信していた。蘇長御と葉平は間違いなく実力を隠していたのだと。
特にこの蘇長御は。
恐らくもっと強いだろう。
この弟弟子がこれほどまでに凄まじいのだから、兄弟子がそれ以下であるはずがない。
まさか無能というわけがないだろう?
空海の質問に対して、葉平は隠すことなく直接答えた。
「法師様にお答えしますが、私もこの金光が何なのかは分かりません。ただ、鬼修に対してはかなり効果があるようです。」
葉平が手を差し出すと、瞬時に度化金光が掌に満ちた。
空海の眼差しはさらに驚愕に満ちた。
彼には分かった。これが度化金光だと。
しかも葉平の度化金光は非常に純粋で、自分の師匠のものよりも強いほどだった。
これはマジで常軌を逸している。
葉平の様子は、せいぜい二十歳そこそこに見える。決して若返りの術を使った修士ではない。なぜなら葉平の血気が旺盛で、修士同士は血気で年齢を判断できるからだ。
若返りの術を使った修士であれば、血気がこれほど旺盛なはずがない。
つまり、葉平は二十歳そこそこで、すでに度化金光を凝縮させていたということだ。
一方、自分はもう二十五歳になろうとしているのに、まだ四百以上の功德の力が足りず、まず仏門金身を凝縮させなければならない。度化金光を育むには、少なくともあと五年か十年はかかるだろう。
一瞬にして、空海は嫉妬を覚えた。
傍らの蘇長御も、思わず驚きを隠せなかった。
彼にはこれが何なのか分からなかったが、とても強力そうに見えた。
しかし、なぜ葉平は自分が教えたと言うのだろう?
まさか弟弟子が自分と神交できるほど強くなっているのだろうか?
「葉施主、小僧から無理なお願いがございます。この度化経文を拝見させていただけないでしょうか?」
我に返った空海は、意を決して尋ねた。
このような質問は不適切かもしれないと分かっていたが、彼は本当に見たかった。一体どんな度化経文なら、二十歳で度化金光を凝縮できるのか。
「あ?それですか、師兄に聞いてください。これは師兄から教わったものですから。」
この言葉を聞いて、葉平は別に渋る様子はなかったが、この経文は蘇長御から教わったものなので、蘇長御が同意しなければ、勝手に伝授するわけにはいかなかった。
「蘇施主、小僧は分かっております。この要求は無理なものかもしれません。しかし小僧は仏祖に誓いを立てることができます。決して経文を広めることはいたしません。もし施主がご不安でしたら、小僧は誓いを立てます。決して学ばず、ただ参考にするだけにいたします。」
空海は口を開いた。彼は本当に好奇心に駆られていた。一体どんな度化経なのか、葉平のような若者に度化金光を育ませることができるのか。
通常、彼空海は晉國仏門第一の天才とされているが、度化金光を育むには、空海自身の目標では五十歳までかかるだろうと考えていた。
しかし彼の師匠は、百歳までに度化金光を育むことができれば上出来だと考えていた。
折衷案として、晉國第一の仏門天才である空海でも、七十歳くらいまでは度化金光を育むのに必要だろう。それに、育んだとしても、決して葉平のこの度化金光には及ばないだろう。
だから彼は本当に好奇心に駆られていた。
空海の切望するまなざしを感じ取り、蘇長御は困惑していた。
自分は度化の法なんて何も知らないのに。
彼は説明しようとしたが、口を開くと、言葉が変わってしまった。
「些細なことだ。空海道友よ、出会いは縁。葉平、空海法師に一部書き写してやりなさい。」
蘇長御は落ち着いて言った。
あの孤高で冷淡な気質が再び現れた。
蘇長御は非常に淡々としていた。
この言葉を聞いて、空海は思わず大喜びした。
葉平も無駄口を叩かず、携帯していた筆と墨を取り出し、空白の手帳に度化の法を書き記した。
半刻も経たないうちに、経文は書き写し終わった。
「空海法師、お持ちください。」
蘇長御が気にしないのなら、彼も何も言うことはなかった。
それに空海は確かに良い人柄だったので、葉平は喜んで与えた。
経文を受け取った空海は、この上なく恭しい様子を見せた。
「南無阿弥陀仏、両施主様の御恩に感謝申し上げます。今後両施主様が小僧に何かお手伝いが必要な際は、どうぞ遠慮なくおっしゃってください。」
空海は合掌し、二人に深く感謝を示した。そして、この度化の法に目を通し始めた。
経文の前半は少し馴染みがあったが、後半は非常に深遠で、一時的には空海には理解が難しかった。
しかし空海は心の中で分かっていた。
理解が難しい経文ほど、その威力は非凡なものだと。
彼は経文を見続けることはせず、ここは臨河鬼墓なので、静かな場所で落ち着いて見ようと考えた。
そう思い至り、空海は経文を懐に収め、その後二人に向かって言った。
「両施主、今や陣法術は破られました。小僧は両施主が青州剣道大会に参加されることを存じております。今出発すれば間に合いますが、さらに遅れれば剣道大会に支障をきたすかもしれません。小僧が両施主を山を下るまでお送りしましょうか?」
空海は申し出て、二人を山から送り届けようとした。
空海は「護衛」という言葉が蘇長御と葉平に対して少し失礼かもしれないと感じたが、礼儀は礼儀として示す必要があった。
「法師様、ご面倒をおかけします。」
空海が山を下るまで送ってくれると聞いて、蘇長御は心の中で百二十パーセント賛成だった。
葉平もうなずいた。
彼らは臨河鬼墓に少し長く滞在しすぎていた。確かに急いで進む必要があった。さもなければ、本当に大会に間に合わなくなる可能性があった。
二人とも同意した。
空海も無駄話はせず、直接二人を連れて山を下り始めた。
そうして、三刻後。
一本の羊腸の小道に、三つの人影がゆっくりと現れた。
「両施主、この小道を半刻ほどまっすぐ進めば、青州官道が見えてきます。そこから西に向かえば、青州古城です。」
羊腸の小道で、空海は二人に別れを告げた。
彼にはまだ完了していない任務があり、二人と共に青州古城まで同行することはできず、ここで別れを告げるしかなかった。
「法師様、ありがとうございます。」
葉平は感謝を述べ、道順を静かに記憶した。
「施主、お気遣いなく。両施主、機会がございましたら、小靈寺にお越しください。その際は、貧僧が心を込めてもてなさせていただきます。」
空海法師は口を開き、これを最後の別れの言葉とした。
「空海道友、お暇があれば、青雲道宗にもお越しください。」
「ご縁がありましたら、また。」
蘇長御も礼儀正しく応じた。
そして、葉平を連れて立ち去った。
彼らは確かに時間に追われていた。青州剣道大会まであと二十日もないのに、道程はまだ五分の一も進んでいなかった。急がなければ、本当に遅刻してしまうかもしれない。
「ご縁がありましたら、また。」
空海は二人の去り行く姿を見送った。
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盟主「得過且過」様の打賞に感謝いたします!ありがとうございます!
読者の皆様、もう一人いらっしゃいませんか?そうすれば打賞ランキングトップ10が全て盟主になり、とても格好良いのですが!