目の前の蘇長御を見つめて。
魔神教の教徒たちは一人一人呆然となった。
彼らは呼吸すらも忘れていた。
彼らは天才を暗殺しに来たのであって、死にに来たわけではない。
この蘇長御は絶世の高人であり、七十二地煞長老が力を合わせてこそ抑え込めるような存在だ。
しかし自分たちはただの築基レベルの雑魚ではないか。
「散って逃げろ、生き残れる者は生き残れ」
ついに、声が上がり、十数の黒い影がその場から消え、四方八方へと猛ダッシュした。
彼らは蘇長御と戦う勇気などなく、逃げられる者は逃げるしかなかった。
一方、路地の中で、蘇長御も呆然としていた。
これだけ?
魔神教は人を殺すのに躊躇わないと聞いていたのに?
魔神教は死を恐れないと聞いていたのに?
なぜみんな逃げてしまったのか?
蘇長御は呆然としたが、すぐに我に返り、すぐさま城外へと走り出し、城外で葉平と合流する予定を立てた。
その時。
青州古城内。
葉平は全力で走り続けていた。魔神教の突然の襲撃は、誰も予想できなかった。
以前、李鈺が魔神教について話していたが、葉平も魔神教が城内で人を殺すほど大胆だとは思っていなかった。
魔神教について、李鈺は詳しく説明していた。
魔神教は勢力が極めて大きく、十國が共同で警戒するほどの教派で、教内には強者が雲のように多く、さらに邪神様を信仰し、人を殺すのは些細なことで、この教派が最も好むのは人を拷問することだという。
なぜなら、彼らは衆生の五怨を吸収して邪器を練成し、あるいは邪功を修練する必要があるからだ。
だから葉平も少し怖くなっていた。
彼は修仙して人々の上に立つために来たのであって、降妖除魔をしに来たわけではない。そんなことは聖母の伝人にやらせればいい、自分は巻き込まれたくないのだ。
そう考えると、葉平は少し気が重くなった。
ふと、葉平はこの三年間の経験を思い出さずにはいられなかった。
修仙世界に転生し、仙縁を逃してしまったのはまだいい。奮発して勉学に励み、鶏より早く起き、犬より遅く寝て、ただひたすら寒窓で苦学して科挙に合格しようとした。
しかし、やっと少し成果が出てきたところで、天は自分に大きな冗談を仕掛けた。これが修仙世界だと知らされたのだ。
よし!
修仙世界なら修仙世界でいい。まだ若いし、二十歳そこそこなら頑張れる。
しかし結果として自分には修仙の才能が全くなく、何度も壁にぶつかり、何度も失敗を重ね、人々に愛される存在から、仙人たちにも見放される存在になってしまった。
ようやく偶然にも仙門に入門できた。それも隠世の仙門だった。やっと天が目を開いてくれたと思った。
しかし、自分の資質があまりにも劣っていることが分かった。何を修練しても上手くいかず、かろうじて数個の剣技を悟得し、青州剣道大会で名を上げ、ついでに正道に転向しようと思っていた。
しかし、このような事態が起こってしまった。
そう考えると、葉平の気持ちはますます重くなり、いらだちが募っていき、最後には怨みの感情が生まれてきた。
パン!
次の瞬間、全力で走っていた葉平は、突然自分の頭を平手打ちした。これが度化金光だ。
この一打ちで、葉平の気持ちは一気に晴れ渡り、先ほど生まれかけていた怨力も消え去った。
「考えすぎるな。まずは宗門に逃げ帰って、それから考えよう。宗主と大師姉の言う通りだ。山下の世界は混沌としている。早く宗門に戻って、しっかり修行して、神功を極めてから山を下りて威張ればいい」
心が晴れ渡り、葉平の思考は非常に明確になった。まずは宗門に戻り、先輩たちの技を真面目に学んでから山を下りることにした。そうすれば、このような状況に遭遇しても、逃げるしかないという事態は避けられるだろう。
葉平が今後の計画を確定させたその時。
突如として、五人の黒衣の人物が目の前に現れた。
両者は見つめ合った。
次の瞬間、黒衣の人物の声が響いた。
「こいつが葉平だ。青州剣道の上位三傑、最優先の標的だ」
声が響くと、瞬時に五人は血色の湾刀を握り、警戒の色を浮かべながら葉平を見つめた。
その時、彼らは躊躇した。
確かに彼らは天才を暗殺しに来たが、殺せると思って殺すわけではない。もし勝てないのに挑んだら、それは愚かな行為ではないか。
しかし彼らが考えをまとめる前に、葉平は踵を返して逃げ出した。
蘇長御の教えが脳裏に浮かんだ。事態が不明な時は逃げろ、勝てなければ逃げろ、勝てても逃げろ。
「大人、どうしましょう?」
葉平が逃げ出すのを見て、誰かが尋ねた。
「どうするも何も、追うんだ。奴は俺たちを見るなり逃げ出した。そう強くはないはずだ。しかも奴の境界はたかが練気一層に過ぎない。きっと名声を騙る者だろう。青州剣道の上位三傑、奴の首は数千の功勲の価値がある。兄弟たち、俺たちは金持ちになれるぞ」
一行の頭目が真剣に分析し、目に笑みを浮かべた。
他の数人も数千の功勲を聞いて笑みを浮かべ、すぐに葉平を追いかけ始めた。
そうして、半刻も経たないうちに、葉平は再び魔神教の教徒の一団に遭遇した。
「あれは葉平だ。首の価値は三千功勲だ。兄弟たち、追うぞ」
「おや、こんなに多くの人が追いかけているとは。兄弟たち、俺たちも追おう」
「くそ、これらの天才は一人一人が逃げるのが上手いな。おい、あそこにいるのは葉平じゃないか?本当だ、この雑魚どもは放っておけ、早く奴を追おう。奴の首は他の連中より価値が高いぞ」
「ちくしょう、お前ら何様だ。葉平は俺たちが先に見つけたんだぞ」
「何が先に見つけただ、俺が先に見つけたんだ。教内の規則では、誰が殺せば功勲は誰のものだ。お前らが追いつけないからって、他人が追うのを邪魔するのか?」
青州古城内で、人々を呆然とさせる光景が繰り広げられていた。
一つの人影が古城内を素早く駆け回り、その後ろを数十人の黒衣の人々が争うように追いかけていた。
群衆の前方。
葉平の顔色は死んだネズミでも食べたかのように悪かった。
彼は本当に何と言っていいか分からなかった。どこに逃げても、必ず魔神教の教徒に出くわしてしまう。
しかも、この魔神教の教徒たちは、みな自分一人だけを狙っているのだ。
振り返ってみると、黒い影のように少なくとも三、四十人の魔神教の教徒が自分の後ろを追いかけていた。
頭がおかしいのか?
こんなに多くの天才を追わずに、なぜ私一人だけを追うんだ?
お願いだから、他の人を追ってくれ、私一人を追わないでくれ。
葉平は吐血しそうだった。
天才と言えば、自分の大師兄こそが天才だ。
司空剣天も天才じゃないか。あんなに多くの天才を追わずに、自分一人だけを追うなんて、誰だって吐血するだろう?
しかし幸いなことに、みんな東へ西へと走り回って、ようやく城門に辿り着いた。
青州古城から逃げ出せさえすれば、天も地も広いし、鳥は空高く飛べる、蕪湖!
そう思うと、葉平は歯を食いしばって十個の燭龍仙穴を全開にし、溢れる靈氣を体に纏わせ、速度を数倍に上げた。
青州古城は既に護城陣法が発動されていて、御剣飛行ができないため、葉平は両足で走るしかなかった。
後ろの数十名の魔神教の教徒は少し呆然としていた。
「こいつ、どうしてこんなに速く走れるんだ?」
「くそっ、これが練気一層の速さか?」
「じいさんは今日こそこの小僧を捕まえてやる。兄弟たち、奴が速く走れば走るほど、それだけ自信がないってことだ。捕まえさえすれば、これからは楽な暮らしができるぞ。」
「兄弟たち、俺は行くぞ。」
「行け!行け!行け!」
「突っ込め!」
数十名の魔神教の教徒は血気盛んになったかのように、次々と丹藥を飲み、速度も上がっていき、葉平を執拗に追いかけた。
しかし、その時、葉平は突然見覚えのある人を見かけた。
そう、見覚えのある人だ。
李長夜だ。
遠くで、李長夜は剣を持って通りを歩いており、何か目標を探しているようだった。しかしその時、後ろから聞き覚えのある声が突然響いた。
「李さん、早く逃げろ!」
「後ろに追っ手がいるぞ!」
葉平の声が響き、挨拶する時間もなく、急いで一言警告するだけだった。
瞬間、李長夜が反応する間もなく、葉平は風のように彼の傍を通り過ぎた。
すぐに数十名の魔神教の教徒が李長夜に視線を向けた。
しかしすぐに、次々と声が上がった。
「他の者は気にするな、これは名もない雑魚だ、葉平を追え。」
「その通り、葉平を追え、他の者は構うな。」
「葉平一人で何百人もの天才に匹敵する。三千の功勳だぞ、俺たちの一生分稼げるんだ、葉平を殺すぞおおお。」
次々と声が上がった。
傍らの李長夜は呆然とした。
名もない雑魚!
名もない雑魚!
またこの名もない雑魚か。
ああああああ!
葉平、私はお前に何の恨みも怨みもないのに、お前は何度も私を侮辱し、今回はこの雑魚どもまで連れてきて私を侮辱するのか!
貴様らを皆殺しにしてやる、ああああああ!
李長夜は怒り狂い、剣を振り上げようとした瞬間、怒りで気が上って、また血を吐いた。
そしてちょうどその時、ついに葉平は東城門に到着した。
命からがら逃げ出すチャンスが目の前にあった。
しかし葉平がほっと息をつく間もなく。
遠くから、また黒い影のように魔神教の教徒たちが四方八方から押し寄せてきた。その数は少なくとも数千人で、後ろの追っ手の何倍もいた。
「くそっ!」
この瞬間、葉平は思わず罵声を上げた。
後ろに数十人の魔神教の教徒、前には数千人の魔神教の教徒、もうどうしようもないじゃないか?
「皆さん、早く彼を捕まえろ。この者は剣道大会の上位三傑で、三千の功勳の価値がある。私はもう走れない、早く行け。」
後ろから、ある魔神教の教徒は本当に走れなくなったが、この連中に利益を得させたくなかったので、大声で叫び、入城しようとしている魔神教の教徒たちに早く出手するよう促した。
そして東城門の外で。
既に数百人の入城しようとしていた魔神教の教徒たちは、この言葉を聞いて一瞬呆然とした。
すぐに数百の視線が、葉平を食い入るように見つめた。
その視線は、まるで絶世の淫魔が絶世の美女を見つけたかのように、目で葉平の服を剥ぎ取りたいかのようだった。
これほど多くの視線を感じ、葉平は完全にパニックになった。
仙穴を全開にし、体内の全ての法力を両足に集中させ、この瞬間の葉平の速さは、まるで稲妻のように、さっと一瞬で城門を越えた。
そして西へと向かった。
なぜ御剣飛行をしないのか?
葉平にはできないのだ!
蘇長御は自分に御剣の術を教えていなかったので、両足に頼るしかなかった。
「追え!」
「逃がすな!」
「殺せえええ!!!!!」
耳をつんざくような声が響いた。
数百人は葉平が御剣飛行をしないのを見て、さらに狂ったように興奮した。彼らの目には、葉平は太った羊のように見えた。
捕まえさえすれば、大量の功勳が手に入るのだ。