第44章 君子は器を身に蔵す

齊武たちは目の前の光景を信じられない思いで見つめていた。泥塑の山神様が突然生き返り、剣を振るって妖を退治しているのだ!

「山神様が霊験あらたかに!」躍ちゃんは呆然と言った。

齊武が一番早く反応した。「違う、誰かが山神像の中に隠れているんだ!」

その通りだった。剣を持つ山神と虎妖が戦う過程で、泥の塊が地面に落ち、中に隠れていた人物の本来の姿が現れた。

それは陸陽だった。

「このクソ野郎、五日間も待ったぜ、やっと出てきやがった!五日間も像になりすましてた甲斐があったぜ。くらえ、この一撃!」陸陽は憎々しげに言いながら、蹴りを放った。

彼のような機転の利く人間は四方を歩き回るのが好きで、じっとしているのが苦手だった。今回は虎妖に気付かれないよう、像の中で五日間も一切動かずにいたのだから、本当に辛かったに違いない。

人々が状況を把握する前に、文武山神像も動き出した。「陸陽、私たち二人も力を貸そう!」

孟景舟と蠻骨が泥塑から抜け出し、それぞれの神通力を発揮して、虎妖を退治した。

……

五日前、山神廟に三人の不速の客が訪れ、辟穀丹を飲んで山神像の中をくり抜き、自らその中に潜り込んだ。

山神像は普通の人より数倍大きく、人一人を収めるには十分な大きさだった。

「本当にこの方法で上手くいくのか?」孟景舟と蠻骨は疑わしげに陸陽を見た。

「蠻骨兄から得た情報を総合すると、虎妖が餌を求めて来るのを待つしかない…とりあえず中に入ろう。」

蠻骨は何かを思い出したように言った。「もしかして、これが書物に書かれている『君子は器を身に蔵す』という意味なのか?」

「その通り、その通り、きっとそういう意味に違いない。やはり万巻の書を読むだけでなく、万里の道を行くことも大切だな。」蠻骨は大喜びした。彼は以前この言葉を読んだ時には意味が分からなかったが、今回陸陽と孟景舟と共に任務に出てきて、このような収穫を得ることができた。

師匠の言う通り、良い学びを得るには、まず良い学習相手を見つけることが大切なのだ!

三人はそれぞれの神像を選び、中に入ると、神像と同じ姿勢を取り、目だけを外に出した。

「おい、聞こえるか?」陸陽は神念術を使って心の中で話しかけた。