第9章 神禽を絵に留める

赤い太陽が、風雲の変化の中で、徐々に西に沈んでいく。

山々は紅く染まり、蒼茫たる山脈は金色の外衣を纏ったかのようだ。

涼風が吹き、その優しさの中に、良き景色の儚さを感じさせる哀愁が漂う。

宣紙の上で、筆先が最初の一画を落とした。

この瞬間、李凡の心は極限まで静かになり、心の中にはただ一つの夕陽だけが残っていた。

時の流れを心で感じ取りながら。

そしてこの時。

この広大な山脈では、驚天動地の出来事が起きていた!

大地の深部で、巨大な心臓が鼓動しているかのようだった。

無数の獣たちが、この瞬間、底知れぬ恐怖を感じたかのように、山林から一斉に逃げ出した。

空飛ぶ鳥も地を走る獣も、この時、巨大な獣の潮となった!

かすかに、無数の獣の潮の後ろには、空を飛ぶ数匹の生靈郷が冷酷に追い立てていた!

獣の潮が押し寄せる!

獣の群れの中、全身真っ白な小白虎さまが光の流れとなり、無数の靈獣郷を追い越していった!

後方には、恐ろしい気配を放つ三羽の猛禽が追っていた!

その三羽の猛禽は、体に炎を纏い、一枚一枚の羽が刀のようで、明らかに普通の靈獣郷ではなかった!

「彼女を捕まえろ、主は彼女の白虎祖血が必要なのだ!」

「もう逃げるな、さもなければ命は無いぞ!」

この三羽の猛禽は、なんと人の言葉を話した!

しかし、小白虎さまは必死に逃げ続けた!

三羽の猛禽がどんどん近づき、もう逃げ場がなくなりそうだった。

そして前方に、突然一つの山峰が現れた。

無数の野獣が逃げる中、不思議なことにこの山峰を避けて通っていた。

そして彼女は感じ取った。この一見普通の山峰の上で、道の韻が絶え間なく演化し、天地法則が流転していることを!

天地の靈獣郷は、このような気配に最も敏感だった。

通常、これはこの山峰の中に、並外れた存在がいることを意味していた。

無数の猛獣が本能的に忌避するほどの!

近づくだけでも、小白虎さまは心の底から震えを感じた。まるで太古より今に至るまでの恐ろしい人物に対面しているかのように。

しかし、今は後ろの追手が近すぎて選択の余地がなく、歯を食いしばって、直接光の流れとなって山峰に飛び込んだ!

小白虎さまが山峰に向かって突っ込むのを見て、後ろを追っていた三羽の猛禽は、すぐに立ち止まった!

「待て、ここは...なんだか恐ろしい気配がする!」

「この山峰には何か異常がある...」

修為が高ければ高いほど、魂に触れるような威圧感をより強く感じ取れた。

「どうする?このまま逃がすのか?」

三羽の猛禽は相談を始めた。

「いや!主は今まさに復活の重要な時期だ。大量の祖血生靈が必要なんだ。この白虎には確かに祖血が流れている。絶対に見逃せない!」

一羽の猛禽の目に冷たい光が宿った:「行って確かめよう。この大地には主より強いものなど存在しない!」

すぐさま、三羽の猛禽は急上昇した!

小白虎さまは光となって上へ突き進み、ついに山頂に辿り着いた。

彼女が前方を見ると、その頂上の開けた場所、巨石の傍らで、一人の青年が無心に絵を描いていた!

遠方では夕陽が限りなく広がり、その光が天地を寒々しくも美しい景色に染め上げ、目の前では、一人の青年が筆を執って絵を描き、物我両忘の境地で、一挙手一投足がこの天地と一体となっているかのようだった...

「なんと濃密な道の韻、天地法則までもが彼の筆に従って流転している...」

小白虎さまは驚きを隠せなかった。これは何という大能者なのか?

彼女が驚いている間に、三羽の猛禽も彼女の後ろに降り立った。

しかし、三羽の猛禽の目には今、驚愕の色が浮かんでいた。

彼らは前方で絵を描いている青年を食い入るように見つめていた。

「なんて恐ろしい...恐ろしい気配だ。魂が直接屈服させられそうだ...」

「ありえない、こんな場所に、こんな存在が...?」

三羽の猛禽は震えていた!

彼らの目には、李凡の一筆一画が、まるで天地の大道全てを包含しているかのように映った。

李凡の筆による夕陽は、まるで絵ではなく、本物の夕陽のようだった!

まるで、徐々に沈んでいく夕陽が、彼の絵の中に入り込んだかのように。

李凡の絵が徐々に圓滿に近づくにつれ、山峰全体で大道が凝集されているかのようだった!

「轟!」

この瞬間、三羽の猛禽の体内で轟音が響き、まるで道の音が鳴り響いているかのようだった!

彼らの体内で、薄い符文が血液から浮かび上がり、徐々に明るく、形を成していった!

「これは...これは大道の呼び声だ。私たちの体内のかすかな祖獣の烙印が、復活しようとしている?」

「なんということだ、私たちは...祖先の金翅大鵬の血脉を取り戻せるのか?!」

「これは天に逆らう機縁だ、天に逆らう機縁!」

三羽の猛禽は、この瞬間興奮を抑えきれなかった!

目の前の人物の絵を見ているだけで、彼らの体内の薄い祖獣の符文烙印が活性化されたのだ!

小白虎さまも低く吼え、この瞬間、全身が光り輝き、まるで神獣となったかのようだった!

彼女は明確に感じ取った。自分の体内で、雑多な血液が淡い金色に変化していくのを!

それは...神獣白虎の祖血!

...

李凡は絵を描くことに没頭し、周囲の出来事には全く気付いていなかった。

夕陽がついに雲の中に沈み込んだ時、彼の手の筆もちょうど止まった!

天地の夕陽は消えたが、彼の筆による夕陽はちょうど完成した!

「ふぅ——」

李凡は軽く息を吐き、紙の上の夕陽を見て微笑んだ。

筆と墨でこの世の美しさを留めることも、幸せなことだ。

彼が振り返ると、山峰の反対側に、いつの間にか三羽の並外れた大鳥と、一匹の可愛らしい猫が現れていた。

「ん?」

李凡は何かを感じ取った。これは彼が絵を描いている時に、初めて生靈郷が現れた出来事だった。

伝説によると、技が極めて高い樂師は、演奏の際に世の中の様々な鳥を引き寄せ、時には鳳凰までも呼び寄せることができるという。まさか絵を描くことにもそのような神秘的な効果があるのだろうか?

李凡は驚き、心が動いた。これは確かに記念すべき出来事だと感じた。

そこで、彼は再び筆を執り、言った:「せっかく現れたのだから、君たちを絵の中に留めておこう——」

彼はさっきの夕陽の絵の上に、大鳥を描き加えた!

大鳥は翼を広げ、夕陽に向かって飛んでいくかのようだった。

まるで生きているかのように、この数羽の猛禽そのもので、簡潔な筆致ながら神韻を伝えていた!

彼が最初の一筆を下ろした!

小白虎さまは突然何かを感じ取り、急いで振り返って見ると、後ろの恐ろしい猛禽の一羽が、鳥の目に恐怖を浮かべながら、何か不可思議な力に制御され、次の瞬間、その場から消え去った!

李凡の描いた一羽目の鳥が、ちょうど完成した!

李凡は筆を執り、二羽目を描き始めた。

「いや...」

残りの二羽の猛禽は鳥の目に驚愕の色を浮かべ、未知で神秘的な恐ろしい力に肝を潰し、翼を広げて逃げようとしたが、動くことすらできなかった!

李凡の二羽目の鳥が完成した瞬間、もう一羽の猛禽が姿を消した。

三羽目の猛禽はその場に崩れ落ち、恐ろしい青年を見つめながら、全身を震わせた。

しかし、それは李凡の筆によって消え去る運命を変えることはできなかった!

李凡はついに三羽目の鳥を描き終えた。三羽の猛禽は...全て消え去った!

小白虎さまは李凡を見つめ、その澄んだ虎の目には恐怖が満ちていた。

なんてことだ、自分はいったいどんな大魔王様に出会ってしまったのか?どんな恐ろしい存在なのか?

筆を執るだけで、洞虛境を超えた三羽の神禽を...そのまま絵の中に描き込んでしまうなんて?

これを誰かに話したら...虎が驚いて死んでしまうかもしれない!

いや、次は自分を描こうとしている...

いや、私白小晴は嫌だ、消えたくない...絵の中に入りたくない...

うぅ、どうしよう...

彼女の虎の目は慌てふためき、ふと思い出した。人間は猫が好きだと言うではないか...

彼女は勇気を振り絞って、その恐ろしい人間に向かって、彼女の人生で最も恥ずかしい声を出した:

「にゃあにゃあ~~~にゃあにゃあにゃあ~~~」