第3章 妹が殴られる

楊小天はこれを聞いて、両手を強く握りしめた。

祖父がここまで偏っているとは思わなかった。

彼の分の築基靈液を全て楊重に飲ませて修行させただけでなく、父親が元々管理していた絹織物の商売も全て伯父の管理に任せてしまった。

全ては自分が亀の武魂を覚醒させたからなのか？

自分のせいで星月城の人々の前で面目を失ったから？だから父親まで巻き添えを食らったのか。

楊小天は自分の部屋に戻り、修行を続けた。

祖父が彼の分の築基靈液を全て楊重に飲ませて修行させたのなら、築基靈液がなくても楊重より強くなれることを楊家荘の人々に見せてやる。

楊小天が修行を続けている間、楊重の中庭では、楊明が孫の楊重を満足げに見つめていた。楊重は確かに期待を裏切らなかった。昨夜二人分の築基靈液を飲んだ後、修行の効果は想像以上だった。

青鸞は太古の神獸の血を引く十級武魂の名に恥じない。

「調子はどうだ？」楊明は慈愛に満ちた表情で孫の楊重に尋ねた。

楊重は自信満々に答えた。「ご心配なく、祖父様。一ヶ月後の家族年会までに、必ず一級に突破して、一級武者になってみせます！」

一ヶ月で一級！

楊明はそれを聞いて、目を輝かせ大笑いした。「よし、お前が家族年会までに一級に突破できたら、祖父から大きな褒美をやろう！」

もし楊重が一ヶ月の修行で一級に突破し、一級武者になれば、それは間違いなく星月城の記録を破り、星月城を震撼させることになる。そうなれば、星月城での彼の面目は保たれるどころではない。

数日が過ぎた。

楊明は毎日楊重の中庭を訪れ、直接楊重の修行を指導し、孫の楊重が日々急速に進歩していくのを見て、心から喜んでいた。

このままでは、楊重は一ヶ月もかからずに一級に突破できそうだった。

一方、楊小天も同じように外出せず懸命に修行を続けていた。

この夜、楊小天が天地靈氣を吸収していると、突然、体内で春蚕が繭を破るような微かな音が響いた。

楊小天は喜んだ。

四日間の苦修の末、ついに突破を果たし、二階に踏み込んだのだ。

靈魂世界では、十級武魂の天才でさえ、二階に突破するには通常三四ヶ月かかるのに、彼はわずか四日で達成した！

楊小天は胸の高鳴りを抑えられなかった。

靈魂世界で四日で二階に突破した者がいるかどうかは知らないが、少なくとも彼らの神海國にはいないはずだ。

夜が明けると、楊小天は修行を止め、全身が清々しく、使い切れないほどの力が漲るのを感じた。

中庭に出て、太極経の修行を始めると、一つ一つの動作が流れるように美しく、歩く度に気の流れが体の周りを巡っていた。

武者二階に突破した後、楊小天は内気力も同様に進歩していることに気付いた。

楊小天が太極経を修行している時、妹の楊靈兒が外から泣きながら走ってきた。

楊小天は不思議に思い、声をかけようとした時、妹のピンク色の頬に赤い手形が付いているのを見た。左頬全体が腫れ上がっていた。

妹の腫れ上がった左頬を見て、楊小天は即座に激怒した。「誰がやった？」

楊靈兒は声を上げて泣きながら、首を振り続け、話そうとしなかった。

楊小天は手形が小さいことから同年代の子供の仕業だと見て取り、怒って言った。「楊重がやったのか？」

楊靈兒はまだ首を振って泣いていたが、妹が楊重の名前を聞いた時の表情の変化を見逃さなかった楊小天は怒りを込めて言った。「行くぞ、兄さんと一緒に奴のところへ行って決着をつけよう！」そう言って、妹の手を引いて楊重を探しに行こうとした。

しかし妹の手を引いた途端、楊靈兒が痛がったので、楊小天は不審に思い、妹の袖をまくってみると、両腕には目を覆いたくなるような鞭の跡があった。

出血はしていなかったが、見ているだけで痛々しかった。

楊小天は怒り心頭に発した。「楊重が鞭で打ったのか？」

妹の楊靈兒は涙を浮かべながら、ついに頷いて泣きながら言った。「楊重がお兄ちゃんのことを亀呼ばわりしたから、私が腹を立てて、一言言い返したの。」

その後のことは言うまでもない。

楊小天は怒り心頭で、妹を連れて楊重を探しに中庭を飛び出した。中庭を出てすぐ、楊重と楊家荘の管理人の子供たちが肩を組んで、鞭を持ちながら談笑しながら歩いてくるのが見えた。

「楊重、お前が私の妹を殴ったのか？」楊小天は駆け寄った。

楊重は怒り狂う楊小天を見ても気にする様子もなく、大笑いして言った。「そうだ、俺が殴った。どうした、お前この亀野郎が妹の代わりに仕返しでもするつもりか？」

言い終わるか否か、楊小天は一歩踏み出し、平手打ちを食らわせた。

楊小天は太極経を修行していたため身のこなしが俊敏で、楊重は避けることができず、たちまち楊小天の平手打ちを左頬に受けた。

パン！

鋭い音が響き、楊重はよろめき、もう少しで地面に倒れそうになった。

楊重は殴られて頭がくらくらし、耳鳴りがして、信じられない表情を浮かべた。武魂を覚醒して以来、彼は楊家荘の天才として、祖父からも手のひらに載せて大事にされていたのに、楊小天が彼を殴るなんて！

二級武魂を覚醒させただけの楊小天が彼を殴るなんて！

「よくも俺を殴ったな！」楊重は頬を押さえながら怒鳴り、そして周りにいた楊家荘の子供たちに向かって叫んだ。「何をぼんやり立ってるんだ、殴れ！」

数人の楊家荘の子供たちはそれを聞くと、前に出て楊小天に群がったが、これらの同年代の子供たちは楊小天の相手ではなく、すぐに楊小天に一人ずつ倒されてしまった。

楊重はその様子を見て、鞭を取って楊小天の顔めがけて振り下ろした。この一撃が当たれば相当なダメージになるはずだったが、楊小天は身をかわし、相手の鞭を掴んで奪い取り、逆に振り返して打ち返した。

楊重は腕を打たれ、泣き叫びながら言った。「楊小天、俺が一級に突破したら、家族年会で絶対に許さないぞ！」

家族年会？

その時、足音が聞こえてきた。明らかに楊重の泣き叫ぶ声が楊家荘の人々の注意を引いたのだ。

最初に駆けつけたのは楊海で、現場に着くなり泣き叫ぶ楊重の姿を目にした。

楊重は父親が来るのを見ると、楊小天を指差して泣きながら叫んだ。「父上、楊小天が私の顔を殴りました。」そして袖をまくって見せた。「鞭でも打ちました。」

楊海は息子の腫れた顔と腕の鞭跡を見て、たちまち激怒し、事情も聞かずに楊小天に怒鳴った。「小さいくせに、こんなにも手荒な真似をするとは、親が教育できていないなら、私が躾けてやろう！」そう言って、手を上げ、楊小天の顔を平手打ちにしようとした。

「兄上、やめてください！」楊超が駆けつけ、遠くから叫んだ。

楊海は楊超が来たのを見て、手を止めざるを得なかった。怒りながら問いただそうとした時、父の楊明も来た。

「何があった？」楊明は遠くから尋ねた。

「父上、小天くんが重兒の顔を殴り、鞭でも打ったのです。」楊海は前に出て言った。「重兒の顔が腫れています。」

「なんだと？！」楊明は表情を変え、前に出て見ると、確かに孫の楊重の顔は腫れていた。