第34章 月の無い暗い夜

数日後。

百花樓。

今日、多くのお客が百花樓の門前に来ると、大門が固く閉ざされており、入口に看板が置かれていた。そこには百花樓が改装のため休業し、半月後の花魁大會の準備をする、と書かれていた。

これは珍しいことではなかった。百花樓が雁の都で最も賑わう場所となれたのは、絶え間ない改装によってお客に新鮮で面白いものを提供してきたからだ。

しかも改装の度に、多くの美しい娘たちが加わるため、今回の改装もお客たちの期待を高めていた。

もちろん、今回の百花樓の改装は本当の改装ではなく、血月樓の客が到着したためだった。

この時、百花樓の楼上で、笠を被った男が北王府の方向を眺めていた。

王傾辭は美人榻に座り、長い脚を組んで、その尻が榻を僅かに凹ませていた。

劉遠がこの時口を開いた:「王お嬢様に感謝します。私に直接復讐の機会を与えてくださって」

劉遠から見れば、煙雨閣が北王様に手を下そうとするなら、あの神秘な宗師様がいない状況で、彼らは完全に北王様を殺すことができたはずだ。

しかし彼らは手を下さず、血月樓が到着するまで待って、北王様暗殺の計画を立て始めた。これが血月樓に機会を与えることになった。

王傾辭は微笑んで言った:「劉館主、私はあなたのために今日まで待ったわけではありません。今回の暗殺を万全にするためです」

劉遠は言った:「王お嬢様がどう考えているにせよ、客観的には私に機会を与えてくれたことに変わりはない」

この時の劉遠は、すぐにでも北王府に突入して北王様の首を自らの手で切り落としたい衝動に駆られていた。

弟の劉通は北王府の神秘な宗師様に殺されたかもしれないが、それでもこの借りは北王様に返さねばならなかった。

理由は単純で、まず彼はあの神秘な宗師様の相手になれるかわからず、次に劉通は北王様暗殺の際に死んだのだから、これは北王様に関係している。

あの神秘な宗師様は見つからないし、勝てもしない。だから北王様を殺して鬱憤を晴らすしかない。

当初、この無能な皇子の暗殺は簡単な任務だと思い、弟に任せたのだが、次に劉通に会った時には、その遺体は既に焼け焦げていた。

北王様が自分の手で死ななければ、この胸の恨みは晴れない。

王傾辭はこの時尋ねた:「劉館主、今夜行動を起こすおつもりですか?」