声を聞いて、穆紫萱はすぐにその方向を見た。
その瞬間、穆紫萱はその場に凍りついた。
この人生で母に再会できるとは思ってもみなかった。
路辰と結婚した日から、もう都に戻れず、家族に会えないことを覚悟していた。
しかし、たった一年余りで母に再会できるとは。
穆紫萱の心は感動で溢れていた。これが王様の言っていた驚きだったのだ!
確かに、彼女にとってこれは大きな驚きだった!
穆紫萱の目から思わず涙が溢れ出た。
娘を見た穆氏も同様に感動し、急いで穆紫萱の前に駆け寄った。
母娘は直ちに固く抱き合った。
穆紫萱が泣けば、穆氏も泣いた。
穆紫萱は家族に会えた喜びで、穆氏は穆府が生死の危機を乗り越え、もう二度と娘に会えないと思っていたからだ。
しばらくして、穆紫萱は目尻の涙を拭い、母を慰めようとした時、遠くに穆長天たちが立っているのに気付いた。
穆紫萱はそこで気付いた。母だけでなく、父も北郡に来ており、二人の兄も来ていた。
さらには穆府の使用人たちまで……
これはどういうことだろう?
穆紫萱はどんなに鈍感でも、この光景を見て穆府に何か変事が起きたことを察することができた。
穆長天は国公であり、兵権を握る人物だった。兵権は既に返上していたものの、天皇が都から出ることを許すはずがない。
それなのに一家揃って北郡にいるということは、明らかに穆府に何かあったということだ。
穆紫萱はすぐに尋ねた。「お母様、これはどういうことですか?なぜみなさん北郡に?」
穆長天はため息をつき、「紫萱、まずは中に入りなさい。都で起きたことをゆっくり話そう」と言った。
穆紫萱は頷き、彼らと共に穆府の応接間へと向かった。
その後、穆長天は都での出来事と流刑の道中で起きたことを全て穆紫萱に話し、穆紫萱は初めて穆府で何が起きたのかを知った。
この時の穆紫萱は、路辰がこのことを告げなかったことを少しも責めなかった。路辰が隠していた理由も分かった。穆府が事件に巻き込まれた時、彼女は出産したばかりで体が弱っていた。
その時に穆府の事を聞いていたら、きっと大きなショックを受けていただろう。
今の穆紫萱は路辰にさらに感謝の念を抱いていた。
まさか北王様が一家を救ってくれるとは、夢にも思わなかった。