第60章 これが北王様の本当の姿なのか

路辰が去った後、穆長天の三人は瞬時に安堵の溜め息をついた。まるで重荷から解放されたかのようだった。

三人はまだ信じられない思いでいた。

あの北王様だというのに!

無学で放蕩無頼の北王様が!

まさか彼が穆府を救った謎の王様だったとは!

穆長天は自嘲気味に言った。「ふふふ、まさか私も人を見誤る時があるとは!」

穆經武が傍らで言った。「父上、私にはまだ理解できません。なぜ北王様は都で実力を隠していたのでしょうか。彼の持つ力と楚家の支援があれば、皇太子の座は間違いなく手に入ったはずです。」

北王様は先ほど「木が林より高ければ、風にさらされる」と言っただけで、それだけでは実力を隠していた理由を完全には説明できない。

息子の質問を聞いて、穆長天はしばらく考え込んでから、髭を撫でながら言った。「北王様のお考えは、我々には計り知れないものだ。」

「しかし北王様のこれまでの行動を見ると、名門の力を借りる気は最初からなかったようだ。そうでなければ、北郡に来てまず最初にすべきことは、楚家に使者を送り、北郡の統治を手伝ってもらうことだったはずだ。だが私の知る限り、楚家と北王府は長らく交流がない。」

「だから私は、北王様の名門に対する態度は、実は夏帝と同じなのではないかと疑っている。」

この言葉を聞いて、穆經武と穆興平は一瞬固まった。

穆興平は何かを悟ったかのように、すぐに言った。「もしかして北王様は意図的に都から身を引き、陛下に名門を排除させ、都の各勢力が皇位継承争いで消耗し尽くした後に、都に戻って正統を継承する計画なのでは?」

穆長天は言った。「おそらくそれが理由だろう。名門の乱は長年の問題だ。これほど忍耐強い皇子である北王様には、必ずもっと大きな野心があるはずだ。彼の目は皇太子の座だけに向いているはずがない。」

「彼の視線はもっと遠い未来に、即位後に処理すべき事柄に向けられているのではないかと疑っている。」

「もし夏帝が名門をすべて解決できれば、北王様が即位した後、大夏は北王様一人の言うがままになる!」

「これには彼にとってもう一つ大きな利点がある。将来誰かが皇室の殺伐さを非難しても、それは現在の夏帝のことであって、北王様とはあまり関係がない。」

穆長天のこの分析を聞いて、穆家の兄弟は呆然としていた。