路辰の言葉を聞いて、林婉芸は思わず尋ねました。「王様、北郡には三万の兵士しかいないと聞きましたが、今回蠻族が三十万の大軍を南下させたとおっしゃいました。北郡の三万の兵士で三十万の大軍を食い止めることができるのでしょうか?」
この質問を聞いて、路辰は死を恐れない様子を見せました。「止められなくても止めなければならない。私は北郡の王だ。もし北郡の地を失えば、私にはもはや北郡の王として、大夏の藩王様としての資格はない。そうなれば、どんな顔で都に戻って父上に会えようか。どんな顔で北郡の民に向き合えようか!」
これは……
路辰のこの言葉を聞いて、陳婉容と林婉芸は驚きを隠せませんでした。
これは確かに、彼女たちが知っている北王様とは違うように思えました。
この時、楚語琴は怨めしそうな表情で路辰を見つめていました。彼女は馬鹿ではありません。路辰が陳婉容と林婉芸の前で演技をしていることを瞬時に見抜きました。
確かに路辰にはそのような気概があり、雁の都で蠻族の南下を食い止める覚悟もありましたが、普段の路辰はこのような話し方をせず、こんなに大げさな態度も見せません。
この正義感あふれる様子は、明らかに他の娘の前での演技でした。
これは何を意味するのか。路辰が玄月宮の宮主に目をつけ、彼女の前で自分の男らしさを見せつけようとしているということです。
実際、楚語琴は一つ見落としていました。路辰は陳婉容の前で見せびらかしているだけではなく、林婉芸にも同じように強い興味を持っていたのです。
陳婉容はこの時、柳眉をわずかに上げ、思考に沈みました。
北郡での計画は簡単に実行できると思っていましたが、予想外の出来事が次々と起こりました。まず入城時に夏帝の影衛に出くわし、今度は北王様が彼女たちの印象とは全く異なる人物だと分かったのです。
どうやら、北王様に情蠱を使うのも簡単なことではなさそうです。
どう考えても、蠻族の侵攻を撃退した後でないと無理でしょう。
しかし、もし北王様が雁の都で蠻族と決死の戦いをする覚悟なら、戦死する可能性は非常に高いでしょう。
北王様が戦死してしまえば、彼の血を使って伏龍呪を作ることもできなくなります。
北王様を諦めなければならないのでしょうか?