路辰は李睿の質問を聞いて、すぐには答えず、群衆の中の秦玉山を一瞥してから言った。「秦指揮官、お前から説明してくれ」
路辰の言葉を聞いて、皆の視線が一斉に秦玉山に注がれた。
李睿たちは少し不思議に思った。指揮官?
それはどんな役職だ?
王府にいつからこんな役職ができたのだ?
秦玉山はその時、群衆の中から出て、路辰の机の前に来て、まず礼をして言った。「はい、王様」
その後、秦玉山は皆に向かって言った。「我々の部下が草原で蠻族の召集令を捕捉しました。蠻族は三十万の騎兵を集めて南下し、北郡を占領し、雁の都を都として建国する計画を立てているようです」
秦玉山の言葉を聞いて、皆の表情が一変した。
蠻族は常に北郡最大の脅威であり、北郡がこれほど貧しいのも、蠻族が時折南下して略奪を繰り返すからだった。
今回は蠻族が略奪に来るのではなく、直接北郡を占領し、さらには北郡に国を建てようとしているとは思いもよらなかった。
書斎にいる人々は一瞬にして不安に包まれた。
特に李睿は、彼が郡守になれたのも、前任の郡守たちが蠻族に殺されたからこそで、そうでなければ彼がこの郡守の座に就くことはなかったはずだった。
彼はようやく平穏な日々を過ごせると思っていたのに、一年余りで蠻族がまた南下してくるとは。
しかも普通の略奪ではない。もし食糧を奪うだけなら、李睿もそれほど心配していなかっただろう。なぜなら蠻族は通常、雁の都より北の他の都市で食糧を略奪するだけで、雁の都のような南方の都市まではめったに来なかったからだ。
我に返った李睿は急いで尋ねた。「あの、秦...指揮官、その情報は確かなのですか?」
蠻族の南下は重大事であり、まして三十万の騎兵が北郡を攻めるというのなら、この件は必ず朝廷に報告しなければならない。それも直ちに。
皆の目には、北郡の三万の兵士は蠻族の三十万騎兵の前では螳螂の斧に過ぎず、朝廷の大軍の助けを借りてこそ蠻族に対抗できると映っていた。
実際、北郡が蠻族の侵入を防ぐたびに、朝廷の大軍に頼ってきた。北郡の三万の兵士は小規模な脅威に対処するためだけのものだった。
秦玉山はこの時言った。「我々が集めた情報は既に検証済みです。我々の部下が蠻族の王庭に潜入し、ある蠻王様の口から直接この情報を得ました」
これは...