第17章 蠍虎の地

暗い精神空間の中で、二つの光影がほぼ同時に舞い、どちらも威力のある拳法と掌法が繰り広げられた。

林動の視線は、新たに生まれた光影を固く見つめていた。今、その光影が繰り出しているのは、今日まさに林嘯から学んだ八荒掌法だった。

「この不思議な石符は本当に驚くべきものだ。私の脳から学んだものを、特別な方法で投影し、さらにその過程で完璧なものに改良しているようだ……」

林動は深く考え込んだ。この不思議な能力は信じがたいものではあったが、現実として目の前に存在する以上、信じるしかなかった。

その原理は分からないが、ただ心を落ち着けて修行するしかない。どうせ自分にとって害はないのだから、取り越し苦労は自分を苦しめるだけだ。

そう考えると、林動は八荒掌法を繰り出す光影に完全に意識を集中させた。八荒掌法は剛猛さで知られ、大きく開いて大きく合わせる動きで、一見すると素朴で単純だが、掌風の中には力強さが満ちていた。

林動は光影が何度か八荒掌法を繰り出すのを集中して見つめ、次第に表情が真剣になっていった。この光影の八荒掌法には、剛猛さの中に柔らかな力が混ざっていることに気付いたのだ。剛柔併済の状態で、一見しただけでは分からないが、実際に戦えば相手を大いに苦しめることができるだろう。

「わずかな変化を加えただけで、こんなにも剛猛な掌法に柔らかさを加えることができるなんて、この石符は本当に驚くべきものだ。」

林動は感嘆の声を上げた。確かにこれらの武學は下乗に過ぎず、本当の達人なら改良しようと思えばできないことではないだろうが、この石符はそもそも人間ではないのだ……

「剛柔併済か。この八荒掌法の殺傷力は確かに強くなっている。もしこれを習得できれば、その威力は通背拳第十響に劣らないだろう。だが、それを実現するのは簡単なことではない。」

もちろん、林動はそのことを予め覚悟していたので、落胆することはなかった。むしろ、より一層精神を奮い立たせて光影を見つめ、八荒掌法の型を展開し始めた……

修行の中で、時は砂のように過ぎ去り、いつの間にか半月が経過していた。

ここ数ヶ月、林家全体の修行の雰囲気は非常に濃厚で、普段は腕白だった者たちも、それぞれの親に強制的に引き戻された。あと二ヶ月で林家族の比武が行われる。これは林家の全員にとって極めて重要な試合だった。

この族の比武で頭角を現すことは、本人が重点的に育成されるだけでなく、その両親の林家での地位も上がることを意味した。そのため、多くの人々が自分の子供が族の比武で良い成績を収めることを期待していた。

この半月の間、林動の骨の奥底でその燃えるような感覚はますます強くなっていったが、なぜか元気の種はまだ生まれていなかった。これには彼も少し困惑していた。

唯一の慰めと言えば、八荒掌法の修行だった。石符光影の完璧な指導の下、八荒掌法は既に習得できており、まだ剛柔併済の境地には達していないものの、繰り出す際には風を切る音が響き、その威力は侮れないものとなっていた。

また、この半月の間に、林嘯の体内の傷も完全に回復した。数日の療養の後、林動から渡された陰珠を吸収し、表面上は分からないものの、林動は林嘯の実力が急速に向上していることを感じ取ることができた。

その様子を見ると、天元境への回復は時間の問題だろう。

鬱蒼とした森の中、林動は大木の上に立ち、林間を見下ろしていた。彼の体には血の跡が見え、かすかな血の匂いが漂っていた。

その血は当然、林動のものではなく、彼が狩った野獣のものだった。半月の修行を経て、林動は骨髄の中で何かが生まれようとしているのを感じることができたが、最後の一歩が、どんなに修行しても完全には達成できなかった。

やむを得ず、林動は実戦に目を向けた。実戦の中で自分の体内に元気の種を生み出そうと考えたのだ。そして、実戦こそが人の実力を真に試す基準なのだ。

この種の実戦は人相手にはできないので、野獣を相手にするしかなかった。

ここ数日の間に、多くの野獣が林動の手にかかって命を落としていた。最初は多少の動揺があったものの、今では林動も冷静に戦いに臨めるようになっていた。

「動きがある!」

林動の目が突然固定され、木の幹から飛び降り、矢のように飛び出した。しかし、近くの茂みに突っ込んだ途端、体が突然止まり、表情を変えながら林の中の獰猛な野獣を見つめた。

「蠍虎」

それは全身が灰褐色の野獣で、虎のような体つきだが、尾は蠍の尾のように鋭い光を放っていた。

蠍虎は非常に凶暴な野獣で、その毛は鉄のように硬く、極めて手ごわい相手だった。このような厄介な相手を見つけてしまったことに、林動は退く意思を持った。

しかし、林動が蠍虎を見つけたのと同時に、蠍虎も彼を発見した。真っ赤な目を向け、血に飢えた大きな口から低い咆哮を上げ、体を起こした。

蠍虎が立ち上がった時、林動は鋭い目つきで、その後ろの木の下に透き通るような暗紅色の果実を見つけた。かすかな香りが漂っていた。

「あれは……三級霊薬の水晶朱果か?」

その果実を見た瞬間、林動は思わず息を呑んだ。まさかこんな場所で三級霊薬に出会えるとは、この運の良さは度を超えているのではないか?

この水晶朱果は、林動が以前青陽町で見たことがあり、その価格は途方もなく高価なものだった。

この予期せぬ発見により、林動は足を止めた。彼のこの様子を見た蠍虎は目に凶暴な光を宿し、低い咆哮を上げると、素早く林動に向かって飛びかかってきた。

それを見て、林動は急いで後退した。目の前の腕ほどの太さの木の幹が、蠍虎の一撃で真っ二つに折られた。

「バン!」

林動は足を回し、蠍虎の背後に回り込むと、連続して数回掌を打ち込んだ。強烈な力で蠍虎は吹き飛ばされたが、その様子を見る限り、大きなダメージは与えられていないようだった。

「なんて硬い毛皮だ……」

この光景を目にして、林動は背筋が寒くなった。この相手を甘く見すぎていたことを悟った。

「ガオォッ!」

蠍虎は打ち倒されるや否や跳ね起き、分厚く粗い虎の爪を林動の胸に向かって踏みつけてきた。

「パパパッ」

迫り来る獣臭い風を感じ、林動も油断できず、即座に通背拳十響を繰り出し、その虎の爪に向かって一撃を放った。

「ドン!」

拳と爪がぶつかり合い、大小二つの影が吹き飛ばされた。林動は一本の木を折って落下し、口元を拭うと血が滲んでいた。怒りが込み上げてきたその時、体の中から突然激しい灼熱感が走った。その灼熱の中で、林動は自分の骨髄の中に奇妙なエネルギーが生まれるのを感じた!

「元気の種か?!」

林動の体は一瞬硬直した。大きく口を開け、その後、体が制御できないほど興奮で震え始めた。あれほど長い間現れなかった元気の種が、まさにこの蠍虎との激しい衝突の中で、強制的に生み出されたのだ!