第29章 石符の異変

淡い月明かりが大地を包み込み、まるで幻想的な銀のベールのようだった。

暗い精神空間の中で、林動の姿が再び現れた。彼の姿と共に、二つの光影も現れ、通背拳と八荒掌法がそれぞれ繰り広げられた。

しかし今回、林動の視線はこの二つの光影には向けられず、第二の光影の後ろを緊張した表情で見つめていた。

午後、彼はその奇門印の巻物を全て読み終えていた。しかし、林霞が言った通り、これは断片的な巻物に過ぎず、あまりにも複雑で煩雑なものを習得するのは確かに困難すぎた。

そのため、午後の研究の効果はほとんどなかった。この奇門印の断片は、確かに林動が今まで接してきた他の武學とは異なっていた。例えば通背拳や八荒掌法は、固定の型があるが、この奇門印は違う。この武學は、特定の印法を使用して体内の元気を引き出し、元気と印法が結合した時に極めて強力な力を発揮することができる。

一瞥しただけでも、林動はこの断片に記された印法が完全ではないことを感じ取ることができた。これが恐らく、林嘯や林震天たちが修得した後に放棄した主な理由だろう。完全な印法がなければ、この奇門印の真の威力を発揮することはできない。

そして、欠けている印法については、石符光影を頼りに、それが完成させられるかどうかを試してみるしかない……

林動が緊張して見守る中、第二の光影の後ろの暗闇で、しばらくの静寂の後、ついに波動と共に新たな光影が形成された。

光影が形を成すのを見て、林動は心の中でほっと胸をなでおろした。

光影は形成されるとすぐに両手を合わせ、複雑な手印を結んだ。

「確かに奇門印の開始の印法だ」

林動の目は、この瞬間熱を帯びて、光影から目を離さなかった。

光影が最初の手印を示した後、さらに連続して5回の変化を見せた。それぞれの印決の変化は非常に複雑だったが、午後の予習のおかげで、林動はなんとかそのリズムについていくことができた。

そして光影の手印が7回目の変化を見せた時、林動の心臓が急に高鳴った。なぜなら、断片の印法はちょうどここで途切れていたからだ。つまり、これ以降の印法は断片にも記録されていなかった……

林動の熱い目で見守る中、それまで流れるように変化していた光影の印法に、わずかな停滞が生じた。しかし幸いなことに、その停滞はほんの数息の間だけで、光影の手中の印法は再び変化を続けた!

「成功した!」

見たことのない、しかし極めて調和の取れた印法を見て、林動は飛び上がりそうになるほど興奮し、顔には喜びと興奮の色が満ちあふれていた。

もともと不完全だった武學が、本当に石符光影の不思議な能力によって修復され、完成したのだ!

「本当にできるとは……」

林動は暫く興奮を抑えきれなかったが、やがて冷静さを取り戻し、再び石符光影に目を向けた。しかし、その瞬間、彼の表情が急変した。光影が明らかに薄暗くなっており、手中の印法の変化のスピードも遅くなっていることに気づいたのだ。

「どうしたんだ?」この光景を目にして、林動は大いに驚いた。この状況は、神秘的な石符を手に入れて以来、初めての経験だった。

林動の険しい表情の下、光影の印法の変化速度はますます遅くなり、ついには突然完全に止まってしまった。しかし、最後の手印の様子から見ると、これが奇門印の最後の段階ではないことは明らかだった。

「まさか石符光影でさえも、この奇門印を完全に修復することができないのか?」

林動は眉をひそめ、さっきまで正常だった石符光影が、なぜ突然修復を停止したのか理解できないようだった。

修復を停止した石符光影は、しばらく停止した後、再び奇門印を最初から実演し始めた。しかし、林動を落胆させたことに、今回の実演もまた先ほどと同じ箇所で止まってしまった……

何度も繰り返したが、変化は見られなかった。

林動は石符光影をじっと見つめ、しばらくして諦めたように溜息をつき、自嘲気味に言った。「まあいいか、これでも断片より完全なものになったんだから」

そう言いながら、林動も両手を上げ、石符光影が修復した印法に従って手印を結び始めた……

この修行は長時間続き、やっと林動は両手を解き、深いため息をついた。それらの印法は複雑だったが、石符光影の完璧な指導の下では、記憶に留めることはそれほど難しくなかった。もちろん、記憶することは簡単でも、実際に使用する時はそう簡単にはいかないだろう。

「断片によると、この奇門印は四段に分かれているが、断片には第一重の印法しか記録されていない。おそらく、先ほど石符光影が修復したのは奇門印の第二重だろう。ただ、なぜ第三重と第四重を修復できなかったのか、あまりにも困難だったからだろうか?」

林動の目が揺れ動き、最後には首を振って溜息をつきながら言った。「二重でも二重でいいさ。どうせ今の実力では、この奇門印の第一重を修得できれば十分なんだから」

心の中でそう自分を慰めた後、林動はやや残念そうにこの精神空間から退出した。

部屋のベッドの上で、林動は閉じていた目を開け、敏捷に飛び降り、気を引き締めて腹に力を入れ、やや不慣れな様子で複雑な印法を展開し始めた。

印法が一歩一歩ゆっくりと完成していくにつれ、林動の経脈の中を巡る元気の種にも、わずかな波動が生じた。しかし、その波動は非常に微かで、一瞬で消えてしまった。

その波動が消えた時、林動は無念そうに首を振った。印法は覚えたものの、元気力と印法を同時に運用する妙技の域に達するには、まだまだ練習が必要だった。結局のところ、この奇門印第一重も三級武術なのだから。

「奇門印の第一重が三級武術に相当するなら、第二重も習得できれば、四級武術には及ばないまでも、三級武術の中ではトップクラスになれるだろう」

そう考えると、林動の先ほどまでの落胆も幾分和らいだ。軽く息を吐き出し、手を伸ばして身につけていた石符を取り出した。しかし、一目見た瞬間、彼の表情は一変した。

「これは一体どうしたんだ……」

今や石符は全体的に暗く、本来の玉のような涼しげな感触も大きく失われていた。さらには、その表面を覆っていた不思議な符文さえも薄くなっていた。

今の石符は、まるで普通の石ころと変わらないように見えた!

その様子は、まるで何かのエネルギーの支えを失い、石符が普通のものになってしまったかのようだった。

「エネルギーが枯渇した?!」

心に閃いた霊光により、林動の心の動揺は急に収まった。今になってようやく、なぜさっき石符光影が修復を半分で止めてしまったのかが分かった気がした。

この石符が武學を完成させるには、おそらくエネルギーの支えが必要なのだ。そして、この間の通背拳、八荒掌法、そして先ほどの奇門印の完成に際して、石符の本来のエネルギーが完全に消耗してしまったのだ!

「きっとそうに違いない……」

部屋の中で、林動は額の冷や汗を拭った。問題の所在が分かれば、解決方法を考えることができる。この石符は彼にとってあまりにも重要で、どんなことがあっても問題を起こすわけにはいかなかった。