九条結衣が携帯電話に何度もキスをしているのを見て、藤堂澄人は怒りで顔が引きつった。
4年間で、他の男を作ったのか?
その考えに、藤堂澄人の心は沈んだ。
九条結衣の楽しそうな笑顔が、彼の目に突き刺さる。
九条結衣は、藤堂澄人がすぐ後ろにいることに気づかず、電話を切ると、車の鍵を返してもらおうと彼の方へ向き直った。すると、藤堂澄人が鬼のような形相で立っており、まるで今にも彼女を食い殺してしまいそうだった。
彼女は先ほどのレストランで、木村靖子を散々侮辱したことを思い出し、彼を怒らせてしまったのだろうと思った。
誰だって、愛する人が侮辱されれば黙っていられない。ましてや、藤堂澄人ならなおさらだ。
これ以上、彼と話したくなかった。九条結衣は藤堂澄人に手をかざし、「藤堂社長、急いでいるので、鍵を返してください」と言った。