何か誤解していたのか

そう言うと、藤堂澄人の方を見て訴えた。「兄さん、見て!結衣ったら、兄さんの目の前で私を侮辱したのよ!だから言ったじゃない、あの女はろくな女じゃないって。どうしてお婆ちゃんはあんな女を気に入っているのかしら。靖子の方がずっといい子なのに」

藤堂瞳は、藤堂澄人にとってたった一人の妹だった。幼い頃から体が弱く、彼はいつも彼女を甘やかしていた。

以前、藤堂瞳が木村靖子のために九条結衣に意地悪をしていたことは知っていたが、あえて見て見ぬふりをしていた。むしろ、それを面白がっている節さえあった。しかし、先程の彼女の言葉は、彼には酷く耳障りだった。

「彼女はお前の主治医だ。彼女の言うことを聞きなさい」

「兄さん…」

藤堂瞳は驚いて藤堂澄人を見た。いつもは優しい兄が、九条結衣の味方をするなんて。彼の真剣な眼差しに、藤堂瞳は思わずたじろいだ。