婦人科の診察室に着くと、藤堂澄人はようやく九条結衣を降ろした。診察室は女性患者ばかりなので、藤堂澄人は中に入るのをためらい、外の待合室で待つことにした。
「これは、出産時の後遺症ね。薬を出しておくから、ちゃんと治療しないと、またひどい痛みが出る」
「わかりました。ありがとうございます、山下部長」
「もっと自分の体を大切にしなさい!」
山下部長は、以前、九条結衣の指導医だったため、彼女とは親しい間柄だった。
九条結衣が突然妊娠した時、山下部長は何も聞かなかった。彼女のプライベートなことだと思ったからだ。しかし、この症状は、明らかに出産が原因だった。
九条結衣は笑ってごまかした。
「お子さんのお父さんは?彼は結衣の面倒を見てくれないのか?」