パーティーのパートナー

九条結衣が苛立ったように眉をひそめて立ち去ろうとした時、藤堂澄人は慌てて彼女を呼び止めた。「明日の夜、ビジネスのパーティーがあるんだ。お前がパートナーとして出席してくれないか」

そう言った途端、九条結衣はまるで宇宙人でも見るかのような、不思議そうな顔で彼を見つめた。

その視線に、藤堂澄人は居心地が悪くなり、自信満々だったはずの表情が、少し曇った。

九条結衣の記憶では、藤堂澄人がパーティーに同伴する女性は、いつも妹の藤堂瞳だった。妻である自分の存在を認めていなかった彼は、当然、彼女をパーティーに連れて行くことはなかった。

当時の九条結衣は、藤堂澄人とずっと一緒にいられれば、それで満足だった。肩書きなど、どうでもよかったのだ。

しかし、時間が経つにつれ、藤堂澄人と共に人生を歩むことの方が、「藤堂家の奥様」の肩書きを得ることよりも、ずっと難しいのだと気づいた。