「九条先生、20号室の患者さんが心筋梗塞を起こしました!すぐに行ってください!」
「はい」
九条結衣をぼんやりと眺めていた藤堂澄人は、突然の呼び声に我に返った。
九条結衣はカルテを手に、研修医と共に病室へと急いだ。
藤堂澄人はその場で待っていた。10分ほどして、九条結衣が病室から出てきた。大きく息を吐き、額には汗が滲んでいる。
ただ見ているだけで、胸が締め付けられるような気がした。
カルテを手に病室から出てきた九条結衣は、時間を確認するため、腕時計を見た。そろそろ退勤の時間だ。
毎日の習慣で、退勤前には担当の患者の様子を見に行くことになっている。
九条結衣はカルテに目を通しながら歩いていたため、目の前に人がいることに気づかず、ぶつかってしまった。