社長室からは、朝から怒鳴り声が聞こえてくる。すでに5人以上の部長が呼び出され、叱責を受けている。社員たちは皆、息を潜め、自分が次のターゲットにならないように祈っていた。
企画部の部長は、藤堂澄人に投げつけられた企画書を手に、しょんぼりとした様子で社長室から出てきた。すでに10回以上も修正しているが、これ以上どう修正すればいいのか、分からなかった。
「松本秘書、これ…」
松本裕司は企画部長の困り顔を見て、同情しながら肩を叩いた。「社長の機嫌が悪いから、仕方ないよ」
藤堂グループの社員たちは皆、一体誰が社長を怒らせたのか、分からずにいた。
藤堂社長は、近寄りがたい雰囲気だが、感情をコントロールするのが上手い人間だ。人前で怒鳴り散らすことなど、滅多にない。一体誰が、社長の逆鱗に触れてしまったのだろうか。