藤堂澄人は怒りを抑えきれず、車を飛ばして第一総合病院へ向かった。
車を降りた彼の周りには、近寄りがたいほどの威圧感が漂い、人々は思わず距離を取った。
いつものように、救急救命室の慌ただしい雰囲気に、藤堂澄人は眉をひそめた。
「しっかり押さえて!動かないように!」
聞き覚えのある声、少し息が上がっている。
振り返ると、九条結衣が救急カートにひざまずき、交通事故で重症を負った患者の処置をしていた。
彼女の手、顔、服は、患者の血で汚れていた。しかし、真剣な表情で処置に当たる彼女の姿から、藤堂澄人は目を離すことができなかった。
彼は、患者の搬送と共に、救急処置室へ入っていく九条結衣の姿をじっと見つめていた。
30分ほどして、九条結衣が救急処置室から出てきた。