043.諦めきれない

藤堂澄人は彼女の後ろ姿を見つめ、瞳の奥が次第に深くなっていった。

誰彼……

あの忌々しい女め、自分を誰彼と同列に扱うとは。

木村靖子は藤堂澄人の表情が極限まで沈んでいるのを見て、内心喜んでいた。

九条結衣のこの態度は完全に自滅行為で、藤堂澄人を強引に遠ざけており、同時に、彼女に彼に近づく十分な機会を与えていた。

彼女は慎重に藤堂澄人を見つめ、小声で言った。「ごめんなさい、澄人さん。私、お姉さまを怒らせるつもりはなかったの。ただ、私のことで誤解が生じないようにしたかっただけです。」

藤堂澄人の心はすでに極限まで苛立っており、木村靖子が彼の前でこのような小細工を使うことで、さらに耐え難い気分になっていた。

「気にするな。お前の存在が俺と彼女の関係に影響を与えることはない。」

冷淡な口調でそう言い残すと、藤堂澄人は振り返ることもなく立ち去った。

彼の冷たい後ろ姿を見つめながら、木村靖子は唇を白くなるほど噛みしめた。

藤堂澄人の言葉は、明らかに彼女に告げていた。彼女の存在は、彼の心の中で、彼と九条結衣の夫婦関係に影響を与えるほどの重みはないということを。

九条結衣が公衆の面前で彼を使い古した靴のように扱っても、彼は気にも留めなかった。

木村靖子の心は怒りと恨みで満ちあふれ、さらなる不甘が彼女の目の底を流れていった。

藤堂澄人に初めて会った時から、この男は簡単には操れない存在だと分かっていた。だから、あらゆる手段を尽くし、一歩一歩慎重に、自分の歩むべき道を計画していた。

しかし、藤堂澄人のたった一言で、彼女は現実に引き戻された。

彼女は母親と同じように、永遠に日の目を見ない愛人でしかなく、正妻の座を奪うことはできないのだ。

いや、より正確に言えば、彼女は愛人にすらなれていない。出会ってから今まで、藤堂澄人は彼女を真剣に見たことすらなかった。

彼が彼女を友人として扱うのは、彼女を認めているからでも、心に留めているからでもない。純粋に彼女が彼の命を救い、さらに彼が最も大切にする妹の藤堂瞳の命も救ったからに過ぎない。それだけのことだ。

藤堂澄人が彼女に与えられるのは、同等の価値の見返りだけだった。

この点について、木村靖子は心の中では分かっていたが、直視したくなかったし、諦めたくもなかった。