やはり木村靖子の肩を持ちに来たのね。
九条結衣は心の中で冷笑い、藤堂澄人の後ろにいる木村靖子に一瞥をくれ、唇の端が動いた。
「ああ、彼女がそんなに弱いとは知らなかったわ。あんなに簡単に転ぶなんて分かっていたら、触れようとも思わなかったわ」
彼女の表情には、謝罪の意も自責の念も全くなく、むしろ皮肉めいた様子さえ見られた。
藤堂澄人が木村靖子のために立ち上がったことに対して、自分を弁解しようという意思も全く見せなかった。
そして彼女が今言った言葉は、木村靖子はもちろん、藤堂澄人にもその意図が分かった。
彼は木村靖子がわざと転んだのを見ていなかったわけではない。ただ、木村靖子に対抗することにエネルギーを費やすのが馬鹿らしいと思っただけだ。
彼女のような心持ちで、ちょっとした策略なら通用するかもしれないが、本当に何かをしようとしても、そんな能力はない。九条結衣の能力があれば、彼女のちっぽけな策略くらい余裕で対処できるはずだ。