瞳の奥に潜んでいた感動も、この瞬間に引っ込んでしまった。
藤堂澄人を見上げると、彼女は冷笑いを浮かべ、強く手を藤堂澄人の手のひらから引き離した。
目の底には、嫌悪の色が満ちていた。
「昔の恋人が来たわね、挨拶でもしに行かないの?」
藤堂澄人の眉は、彼女のその言葉に顰められた。
この生意気な口を縫い付けてやりたい!
「今から彼女を懲らしめに行くわ。応援しに来る?」
彼女の唇の端には、嘲笑いが浮かんでいた。木村靖子と藤堂澄人の関係のせいで、今では藤堂澄人を見るたびに嫌悪感と不快感を覚えるようになっていた。
言葉が終わるや否や、彼女は九条政たちの方へ歩み寄っていった。
この時、九条政は九条結衣の存在に気付いておらず、ただ木村靖子を連れて皆に挨拶をしていた。
「九条社長、お隣の美しい若い女性は誰ですか?ご紹介いただけませんか?」