054.私生児と高貴は無縁

同じ九条政の娘なのに、なぜ九条結衣は皆から追い求められるのに、木村靖子は軽蔑されなければならないのか。

しかし、この夜会では多くの人が九条政の顔を立てていた。九条政は靖子を連れて宴会場を一周し、ほぼ全員が彼女のことを知ることとなった。

九条政が靖子を連れて向きを変えた瞬間、一人の人物が彼らの前に立ちはだかった。

その態度は、「傲慢」という言葉でも足りないほどだった。

「結衣?!」

九条政の笑顔は一瞬で凍りついた。明らかに九条結衣がここに現れるとは思っていなかったのだ。

彼女は九条家の令嬢ではあるが、このような商談の集まりには全く興味を示さなかった。彼も彼女が来ないと確信していたからこそ、靖子を連れてくる勇気があったのだ。

認めたくはないが、彼は心の中で九条結衣という娘に対して、ある種の畏れを抱いていた。