「こんな遅くまで、お祖母様は運転手を呼んで家に送らせましょう。遅くまで起きているのは体によくありませんから」
「ええ、山本に電話してみるわ」
電話を切った後、お婆様は九条結衣に言った:「この時間はタクシーを拾うのが難しいわ。あなたのように綺麗な女の子が、ドレス姿で夜遅くに一人で帰るのは心配だわ。山本が来たら、ついでにあなたも送ってもらいましょう」
九条結衣は少し考えた。藤堂家と九条家は同じ方向だったので、断る理由もなく、頷いて承諾した。それに、お婆様を一人で運転手を待たせるのも心配だった。
しばらくすると、黒いマイバッハがカフェの駐車場に停まった。
九条結衣がお婆様を支えてカフェを出てきた時、笑顔を浮かべていた顔が、マイバッハから降りてきた人を見た瞬間に凍りついた。表情も一気に曇った。