「結衣……」
「お婆様……」
九条結衣は藤堂お婆様の言葉を遮り、唇を軽く噛んで、淡々と微笑んで言った。「お婆様、藤堂澄人のいない日々が、どれほど気楽で自由だったかご存知ですか?」
藤堂お婆様は結衣のこの質問に一瞬戸惑い、すぐには答えられなかった。
結衣が突然自嘲的に笑い出すのを見て、その美しい顔には悲しみの色が浮かんでいた。「澄人と結婚してから、私が九条家のお嬢様だということすら忘れかけていました。」
藤堂お婆様は結衣を見つめた。四年の月日が流れ、結衣の澄人への怒りは収まったと思っていたが、今回の帰国で離婚への決意がより一層固まっていることに気付いた。
「結婚した三年間、私たちの会話は……いいえ、彼が私に話しかけた言葉は、指で数えられるほどでした。確かに、私は彼を愛していました。だから、彼が私との結婚を承諾したと知った時、夢の中でも笑顔でした。」