073.九条結衣、よくやったな

彼は心の中で爆発しそうな怒りを必死に抑えながら、なるべく気にしていないように聞こえるよう努めたが、歯を食いしばる様子が、その感情を露わにしてしまっていた。

「そうよ、結衣が私に言ったわ。もう4年も引き延ばしてきたから、これ以上待てないって」

彼女はカバンから印刷された書類を取り出して藤堂澄人の前に差し出し、言った。「これは結衣の代わりに私が用意した新しい離婚協議書よ。条項は明確に記載されているから、藤堂社長、ご確認いただいて、問題なければサインを…」

女性の言葉が終わらないうちに、藤堂澄人はその協議書を手に取り、横のシュレッダーに放り込んだ。瞬く間に紙切れとなった。

「藤堂澄人!何のつもりよ!」

女性の表情が一変し、その妖艶な顔に怒りの色が浮かんだ。

「よくも私と九条結衣の離婚訴訟を引き受ける度胸があったな!」