藤堂澄人はその場に立ち尽くし、九条結衣の後ろ姿が自分の視界からだんだん小さくなっていくのを見つめながら、眉間にしわを寄せ、心の中に後悔の念が滲み出てきた。
胸の中の重苦しい感覚を手で揉みながら、そこが今、鈍く痛んでいた。
あの時、木村靖子の話を持ち出したのは、ただ彼女に仕返しをするための口実に過ぎなかった。そして藤堂瞳の口から語られ続けた木村靖子は、彼の最高の武器となっていた。
しかし今、その口実のせいで、九条結衣との結婚生活において、こんなにも受け身な立場に追い込まれてしまった。
藤堂澄人の視界から離れると、九条結衣はすぐに病院を出て車に乗り込んだ。それでも、藤堂澄人から受けた重圧は依然として消えることはなかった。
車の中で長い時間座っていると、やっと気持ちが落ち着いてきて、病院を後にした。
九条結衣が九条家に戻ると、意外にも九条政が家にいることに驚いた。木村靖子母娘と一緒に住んでいると聞いていたのに、その三人は本当の家族のようだったのに、なぜ今日は戻ってきたのだろう?
九条政が九条初の傍らに座り、「良き祖父」を演じるかのように初に気遣いの言葉をかけている様子を見て、九条結衣は眉をひそかにしかめ、直感的に嫌な予感がした。
妻も娘も顧みない男が、一度も会ったことのない孫に心を尽くすはずがない。
九条政が突然初にこのような態度を取ることに、九条結衣の心には警戒心が芽生えた。
しかし、幼い初に人間性の醜さを見せたくなかったため、九条政の面子を潰すようなことはせず、ただ前に進み出て、「初」と呼びかけた。
「結衣!」
初は九条結衣の方を振り向くと、顔を輝かせ、すぐに九条政の膝から飛び降りて九条結衣の方へ走っていった。「結衣、見て、これはおじいちゃんがくれた誕生日プレゼントだよ」
九条結衣は頷き、初のために用意したプレゼントを渡しながら言った。「これはママからのプレゼント。気に入ってくれるかな?」
初が彼女からプレゼントを受け取る時、九条結衣は何気なく九条政が渡したプレゼントを受け取り、意味深な眼差しで九条政を見た。ちょうどその時、九条政も彼女を見ていた。
二人の視線が合うと、九条政は微笑みを浮かべたが、それは九条結衣の心に嫌悪感を抱かせるだけだった。