「瞳、私と澄人のことをいつも結びつけないでよ。彼はもう結婚してるのよ。そんな誤解を招くようなことを言うのはよくないわ。私と澄人は友達だけよ」
「ふん!九条結衣がいなければ、お兄ちゃんはとっくにあなたと結婚してたはずよ!」
木村靖子は藤堂瞳のこの単純な性格を見抜いていた。だからこそ、藤堂瞳という切り札があれば、九条結衣に負けることはないと確信していた。
藤堂瞳がこのように説得を聞き入れない様子を見て、木村靖子は困ったような表情を浮かべ、植田涼の方を見て気まずそうに微笑んだ。まるで自分も精一杯努力したという様子だった。
植田涼は特に反応せず、引き続き一隅で会社の仕事を処理していた。
九条結衣の他に、木村靖子がもう一人羨ましく妬ましく憎らしく思う相手が、藤堂瞳だった。