「澄人、涼。」
視線を向けると、藤堂お婆様が介助者に付き添われて手術室の方へ歩いてくるのが見えた。
「お婆様。」
「お婆様、どうしてここに?」
植田涼はお婆様の腕を支えながら尋ねた。
「瞳の様子を見に来たかったのよ。」
藤堂澄人はお婆様の前に歩み寄り、言った。「お婆様、手術は少なくとも8、9時間かかります。お体が良くないので、先に休まれてはいかがですか。瞳の状態について何かあれば、必ずお知らせします。」
「そうですね、お婆様。私たちがここで待っていますから、先に休んでください。兄と私がここにいれば十分です。」
植田涼も同調して言った。
傍らの木村靖子は、そのまま無視され続けていた。藤堂お婆様は彼女に一瞥すら与えなかった。
木村靖子は、藤堂お婆様の心の中には九条結衣という一人の孫嫁しかいないことを知っていた。そのため、藤堂澄人と結婚するためには、まずお婆様の心を開かなければならなかった。
無視されているのを見て、木村靖子の心は少しも大人しくならず、植田涼の言葉の後に、すかさず口を挟んだ。「そうですよ、藤堂お婆様。私たちが瞳のことを見守っていますから、先にお休みになってください。」
藤堂お婆様の視線が、ようやく木村靖子に向けられた。この娘に対して、彼女は心の底から好意を持てなかった。好意を持てないどころか、むしろ反発を感じていた。
この娘の心が純粋でないと常々感じていた。たとえ彼女が瞳を救うために子宮を傷つけたとしても、それでもこの若い娘に対して好感を持つことはできなかった。
しかし、彼女は確かに藤堂瞳の命の恩人である。お婆様は彼女を困らせることはしなかったが、親しみも示さず、ただ一瞥を向けただけで、再び孫に視線を戻した。
「橋本から聞いたけど、瞳の手術をするのは結衣なの?」
「ええ。」
九条結衣の話題が出ると、藤堂澄人の表情は明らかに曇り、ただ重々しく返事をした。
一方、植田涼は九条結衣について話す時、声に敬意を込めて言った。「はい、お婆様。確かに義姉が瞳の手術を担当します。前回の早産の時も、義姉のおかげでした。」
お婆様の顔に笑みが広がるのを見て、「結衣という子は、いつも私を驚かせてくれるわ。」
その満面の賞賛の表情は、傍らの木村靖子の目に極めて不快なものに映った。
ふん!九条家の子だからでしょう?