085.演技派

九条結衣は眉を上げ、この演技派がまだ彼女の前で芝居を打つ勇気があることに驚いた。

あ、そうだ、忘れるところだった。今、藤堂澄人が彼女の隣に立っているから、彼女はきっと世界中が自分をいじめていて、霸道な男性主人公の保護が必要な白い花の役を演じなければならないのだ。この状況で敵である彼女に対して高慢な態度を取るわけにはいかない。

幸い、この演技派も懲りたようで、前回のパーティーのトイレで彼女を殴った後、今では大人しくなり、彼女への呼び方も変えた。

「何か用?」

九条結衣は振り返り、木村靖子の臆病そうな様子に眉を上げた。木村靖子に注意が集中していたため、隣にいる男性の目に浮かんだ不快感に気付かなかった。

「私...私も一緒に行ってもいいですか?瞳の親友として、何もできないので、瞳のために何か役立つことがないか聞いてみたいんです。」