「時代は変わり、人も変わる。好みが変わるのは当然のことです。藤堂社長は忙しい方なのに、私の食事の好みなんてどうでもいいことではないですか?」
九条結衣は少し苛立たしげに眉をひそめ、その後何気なく笑みを浮かべた。確かにこの問題は些細なことだったが、結衣がそんな軽い口調で言い放つと、藤堂澄人は何故か不快感を覚えた。
特別な理由がないのに、どうして突然好みが変わるはずがあるのか?
悪魔に取り憑かれたかのように、彼はこの問題に執着せずにはいられなかった。「なぜ突然好みが変わったんだ?」
元々低かった声は、今や威圧的な響きを帯びていた。まるで結衣が答えなければ、決して諦めないとでも言うかのように。
これまで彼女に一瞥すら与えようとしなかった藤堂澄人が、なぜ彼女の好みの変化にこだわるのか理解できなかった。