089.藤堂澄人が変わった

九条結衣が拒否しなくなったのを見て、藤堂澄人は思わず口元が緩み、同時にほっとした。いつからか、彼は九条結衣に何度も拒否されることを恐れるようになっていた。

車に乗り込むと、運転手は運転席で慎重に尋ねた。「社長、そのまま自宅へお戻りですか?」

同時に、運転手はバックミラー越しに九条結衣の険しい表情を見て、複雑な表情を浮かべた。

奥様が社長の背後で他の男性との間に子供を作ったと知ってから、奥様を見るたびに首が危ないような気がしていた。

結局、社長が寝取られたという衝撃的な秘密を知ってしまったため、いつ社長に口封じされるかと心配だった。

奥様は一体何を考えているのだろう。社長は財力もあり、容姿も良く、何より妻思いなのに、どうして社長の背後で浮気をして子供まで産むという悪質な行為をし、さらに社長に対して不機嫌な顔を見せることができるのだろう。