125.藤堂社長はちょっと嬉しい(5)

彼女は重要なポイントを選んで話し、藤堂澄人が激怒すると思っていたが、彼女の言葉を聞いた時、彼は軽く眉を上げただけで「彼女が離婚したくないと言ったのか?」と尋ねた。

藤堂瞳は彼の口調に気付かず、そう聞かれてますます告げ口に熱が入った。

「そうよ、お兄ちゃん。九条結衣がどれだけ厚かましいか分からないわ。藤堂家の若奥様の座にしがみついているなんて、こんな恥知らずな人がいるなんて信じられない」

藤堂瞳は藤堂澄人の心中を読み取れなかったが、傍らにいた木村靖子は見抜いていた。

彼女は先ほどから藤堂澄人の表情に注目していたので、怒りで引き締まっていた彼の表情が、藤堂瞳が九条結衣の離婚拒否を伝えた時に、明らかに和らいだのを見逃さなかった。

それほど明確ではなかったが、彼女にはしっかりと見えた。