137.彼は何を見たのか!!!

向かい側に座っているのは長陵重工業の社長だった。長陵重工業は藤堂グループのような大財閥には及ばないものの、名の知れた大企業である。しかし、長陵重工業の社長でありながら、この人物は藤堂澄人の前では少し緊張しすぎているように見えた。

藤堂澄人のような落ち着きと余裕のある風格、座るだけで場を支配できる存在感に比べ、長陵重工業の社長は初めて上位者からの威圧感を感じていた。

今回のプロジェクトは、小さいとは言えないが、大きいとも言えない規模で、藤堂家当主が直接交渉に出向くほどのものではなかった。

藤堂家当主どころか、長陵重工業の社長も出向く必要のないものだった。

長陵重工業は以前から藤堂グループが誰かを派遣して交渉に来ることは知っていたが、まさか藤堂澄人が直接来るとは思ってもみなかった。

そのため、藤堂澄人を接待するのは、長陵で最も地位の高い社長しかいなかった。

藤堂澄人がこれほど重視していることから、長陵重工業の幹部陣は、今回のプロジェクトが非常に重要で利益の見込める案件に違いないと主観的に判断した。でなければ、なぜ藤堂グループの最高責任者が直接関与し、さらには自ら足を運ぶのだろうか。

藤堂澄人は向かい側で少し落ち着かない様子の男性を見て、微笑んで言った。「吉田社長、お気遣いなく。私が急遽来ることにしたので、ご迷惑をおかけしました。」

彼の声は淡々としており、その身から漂う雰囲気も同様に淡く軽やかだったが、威圧感は極めて強く、簡単な一言で、同じく企業のトップである相手を恐縮させるほどだった。

「藤堂社長、とんでもございません。」

双方が挨拶を交わした後、本題に入った。

藤堂澄人が今回来たのは、このプロジェクトが主な目的ではなく、吉田社長と長々と挨拶を交わす忍耐もなかった。ただ横にいる松本裕司に軽く目配せをした。

松本裕司は会意し、うなずいて吉田社長に言った。「吉田社長、これは以前から御社と協力している企画書です。一切変更はありません。御社でも確認されたと思いますが、何か要望がございましたら、お申し付けください。双方で相談させていただきます。」

藤堂澄人まで来ているのだから、この吉田社長はもはやこのプロジェクトに何の問題があるとも思えず、加えてこの企画書は以前から各部門の者に確認させており、確かに問題はなく、非常に良いプロジェクトだった。