136.決して振り返れない

先ほどの九条結衣の言葉だけで彼を説得できたことから、この若い女性が相当な手腕を持っていることが分かった。

「分かりました」

「宮崎社長のご理解に感謝いたします。会社は引き続きあなたに頼らせていただきます。私がこの立場にいるとはいえ、ほとんどの決定権はあなたにお任せします」

九条結衣は宮崎裕司が顔を立ててくれたので、当然相手を尊重する態度を示した。

「九条社長、お気遣いありがとうございます。何事も相談しながら進めましょう。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

宮崎裕司が出て行くと、九条結衣は立ち上がって床から天井までの窓の前に立ち、外の往来を見つめながら、深い眼差しを向けた。

C市に来て既に三ヶ月以上が経ち、彼女は会社の運営にも徐々に慣れてきていた。

実際、会社からの出資を受けるのは極めて良い提案だった。どんな会社でも、一社だけで発展していくのは保守的すぎる。先ほど宮崎裕司に言った理由も正しいが、絶対的なものではなかった。