135.彼は大物だ

藤堂グループや二宮家のような大財閥には及ばないものの、全国でもかなりの規模を誇る企業だった。

だからこそ、当時小林会長が直々に声をかけてきた時、数日考えた末に承諾したのだ。

小林会長は確かに彼を信頼し、会社の全ての意思決定と運営を任せていたが、藤堂グループからの出資の件については、形式上小林会長に相談したところ、意外にも断られてしまった。

この件については今でも理解できないが、彼は空気を読める人間だった。社長が信頼してくれているのだから、その判断は尊重しなければならない。たとえ藤堂グループのような大口スポンサーを失うことになっても、残念に思うしかなかった。

今や、小林会長が会社を九条社長に譲渡し、若い九条社長は小林会長とは違う考えを持っているはずだと考え、以前の企画書を再び取り出した。

そう考えながら、九条結衣に向かって言った。「藤堂グループは豊富な資金力を持っています。彼らの資金支援があれば、私たちの発展はずっと早くなるでしょう。」

九条結衣はこの時すでに藤堂グループの企画書に目を通し終えていた。認めざるを得なかったが、藤堂グループの企画書は非常によくできており、どこにも欠点が見当たらなかった。しかし……

藤堂グループは藤堂澄人のものだ。彼とは一切関わりたくなかった。資金調達するにしても、藤堂グループだけが選択肢ではないはずだ。

「宮崎社長、あなたの意図はよく分かりますし、賛同もします。でも、一つ考えていただきたいことがあります。私たちの会社は技術開発で成長してきました。これらの技術は全て当社の特許です。私たちは膨大な人材と資金を研究開発に投じてきました。藤堂グループが資金を投入してくれば、いずれ私たちの研究開発技術を狙ってくるはずです。」

宮崎裕司が黙り込むのを見て、さらに続けた。「技術こそが会社の魂です。宮崎社長、正直に申し上げますと、藤堂グループの藤堂社長は私の元夫です。私は彼のやり方をあなた以上によく知っています。彼は大物です。小魚ではありません。他人のために嫁入り道具を作るような人ではないのです。」

宮崎裕司は藤堂澄人が九条結衣の元夫だと聞いて、少し驚いた様子を見せた。