ちょうどトイレで、九条初のクラスメートが同じプテラノドンの衣装を着ていたので、彼女はクラスメートの母親と子供を交換する理由を見つけて出てきた。危なかった。幸い、藤堂澄人は疑わなかった。
「社長」
「藤堂社長、お仕事は片付きましたか?」
向かい側の吉田社長が親切に尋ねた。
「ええ、片付きました。ご心配いただき、ありがとうございます」
藤堂澄人は礼儀正しく、しかし距離を置いて頷いた。「プロジェクトの件については、いつでもご担当の方を弊社までお送りください。本日は吉田社長のお時間をこれ以上頂戴しないようにいたします」
藤堂澄人は丁寧に言ったが、吉田社長もビジネスの世界の人間だ。藤堂澄人が帰るように促していることが分からないはずがない。藤堂澄人を食事に誘う考えを改め、「では、私はこれで失礼いたします。藤堂社長にはもう少しこちらにお留まりいただき、私どもの歓待をお受けいただければと存じます」と言った。