「藤堂グループの藤堂社長がお会いしたいとのことですが、お時間を調整していただけますでしょうか?」
秘書は話しながら、内心とても興奮していて、目が抑えきれないほど輝いていた。
藤堂グループだ。あの藤堂グループなのだ。
あれほど大きな企業グループの社長が、彼らの九条社長との面会を希望するなんて。確かに誠和は成長の可能性を秘めているが、それでもグループの総帥が直接彼らの社長との面会を求めるほどではないはずだ。
九条結衣は秘書の輝く目を見て、彼女が藤堂澄人のことを話していることを理解した。
結局、藤堂グループは全国でもこの一社だけなのだから。
藤堂澄人のことを思い出すと、自然とあの日のショッピングモールでの出会いが頭に浮かび、眉をしかめた。
「お断りします」
秘書が九条結衣はきっと即座に承諾すると思っていた矢先、九条結衣は冷たくそう言い放った。