「私にはママがいるの。きれいで頭が良くて、スタイルも抜群。お金も稼げるし、医者として人命も救えるの。あなたの額の相を見ると運気が悪くて、肝火が旺盛みたい。きっと奥さんがいないからだと思うわ。私のママのことを知ってみない?」
松本裕司「……」
これは……ママを売り込もうとしているのか?
この子は目が利くな。一目で我が社のイケメンで金持ちの社長に目をつけたか。
松本裕司が驚いている最中、携帯に一通のメッセージが届いた。奥様の子供を調べるよう依頼した人からだった。
開いてみると、そこには一枚の写真があった。
松本裕司「!!!」
藤堂澄人の隣にいる小さな子供を見て、もう一度……!!!
「社長」
松本裕司は、まだ衝撃を受けている藤堂澄人に低い声で呼びかけ、手元の写真を渡しながら小声で言った。「奥様の息子です」
藤堂澄人の心は、何かに強く打たれたかのように震えた。その子の澄んだ瞳に視線が釘付けになる。
自分そっくりなこの顔を、否定しようとしても誰も信じないだろう。これが自分の息子でないなんて。
喉が渇き、胸が妙に痛んだ。
しばらくして、彼はしゃがみ込み、長い腕を伸ばして子供を抱きしめた。冷静な反応を装っていたが、その大きな体は微かに震えていた。
「おじさん、私を抱っこするってことは、承諾してくれたの?」
初は藤堂澄人の腕の中で顔を上げ、キラキラした目で尋ねた。「じゃあ、ママと時間を合わせて、ゆっくり話し合う約束をしましょうか?」
藤堂澄人は周りを見回し、九条結衣の姿が見当たらないことに気付くと、眉をひそめて低い声で尋ねた。「ママはどこ?」
「ママはまだ仕事中。おばさんがご飯作ってる間に抜け出してきたの」
初は目をパチパチさせながら言った。「おばさんが学校に迎えに来た時、おじさんを見かけたの。おじさんが松本さんと空港に行くって話してるのを聞いて、追いかけようとしたんだけど、おばさんが離してくれなくて。だから一度家に帰って、おばさんがご飯作ってる時にこっそり出てきたの」
彼は真剣な眼差しで藤堂澄人を見つめ、こう言った。「おじさんは私にそっくりだから、きっと父と子の縁があるはず。ちょうどママも私の本当のパパのことは好きじゃないし、おじさんはかっこいいからママと相性いいと思う。ママと見合いしてみない?」
松本裕司「……」