「知っているどころか、とても親しいんだ!」
藤堂澄人は歯を食いしばって低い声で言った。九条初が怯えた様子を思い出すと胸が痛くなり、抱きしめている柔らかな子供の体に手を上げて叩こうとしたが、できなかった。
子供が彼に会いたがっていたのだから、どうして責められようか。それに、三歳の子供に、そこまでの考えがあるはずもない。
「初、ママが心配して怖がることを知らないの?もし悪い人に連れて行かれたらどうするの?ママが悲しむのが怖くないの?」
藤堂澄人は我慢強く初に語りかけた。
「わかってるよ。でも、遅くなったら、おじさんが飛行機で行っちゃって、見つけられなくなるのが怖かったの。」
初は無邪気な瞳をパチパチさせながら、手首につけている子供用の腕時計を見せて言った。「おじさん見て、これは安西臣おじさんが作ってくれた特別な時計なの。中にプログラムが入ってて、誰かに連れて行かれたら、このボタンを押すと、時計が警察に通報して、警察のおじさんが私を見つけてくれるの。」