「九条初を迎えに行って帰ってきてから、野菜を洗って料理を作ろうとしていました。彼はいつものようにリビングで遊んでいたんですが、私がキッチンから出てきたとき、子供がリビングにいなくて、あちこち探しても見つからなくて、私は...」
ベビーシッターは怖くて言葉が出なくなった。
子供が消えてしまい、ベビーシッターとして責任は免れない。
九条結衣は目を閉じ、深く息を吸い、何度も何度も自分を落ち着かせようとした。
「警察には通報しましたか?」
「はい、警察は今、周辺の監視カメラを確認しています」
九条結衣は頷いた。彼女が今住んでいる家は、従兄の小林翔の所有物で、市の中心部の最も繁華な地域、人口が最も密集している場所にある。
当初、彼女がここに住むことを選んだのは、通勤に便利で、九条初の幼稚園からも近かったから。
しかし今の状況は良くない。人口が密集しているほど、九条初を見つけるのが難しくなる。
まもなく、数人の警察官が訪れ、最新の進展を伝えた。「九条さん、マンションの監視カメラによると、お子様は一人でマンションを出て、西に向かって歩いていったようです。しかし、この付近の監視カメラの一つが故障していて、そこで子供の姿を見失いました。その先の監視カメラでは彼の姿は確認できていません。おそらく、どこかの車に乗ったのではないかと思われます」
九条結衣の顔から血の気が引いた。警察の言葉の意味を理解した。九条初が自分で車に乗って知らない場所に行ったか、あるいは誘拐犯に連れ去られたかのどちらかだ。
誘拐犯に連れ去られたとしたら、それ以上考えたくなかった。
「ご安心ください。各道路の出口に警察官を配置し、通過する車両を検査しています。また、各放送局にも連絡して、子供の行方に注意するよう呼びかけています」
九条結衣は自分を落ち着かせようと努め、頷いた。「ありがとうございます」
警察が去った後、九条結衣は小林お爺さんに電話をかけた。小林お爺さんは退職した教授で、市内に多くの人脈がある。今は警察だけに頼るわけにはいかない、自分でも人を出して探さなければならない。
C市国際空港——
「九条結衣のことは、どうなっている?」
「まだ調査中です。もうすぐ分かると思います」
松本裕司は恐る恐る藤堂澄人を見て答えた。