「これから出かけるの?」
九条結衣の声に、家政婦は我に返り、首を振った。「いいえ、これから卒業論文の準備をしないといけないんです」
家政婦の小林由香里は、もうすぐ卒業を迎える大学生だった。授業もほぼ終わり、この学期は忙しくなかったため、家計が急に苦しくなり、緊急の仕事を探していた。
ちょうど九条結衣は仕事が忙しく、人柄が良く、細やかで、考え方も進歩的な家政婦を探して九条初の世話をしてもらおうと考えていた。
家政婦紹介所で応募に来た小林由香里に出会い、若い大学生で可愛らしい女の子だったので、九条初の世話を頼むことにした。
九条結衣は厳しい雇い主ではなく、小林由香里とは年齢も2歳しか違わないため、話も合い、普段は自由な時間を与え、九条初の世話さえしっかりしてくれれば良かった。