156.雨に濡れる

駐車場は建物の入り口からそう遠くなかったが、九条結衣は傘を差しながら、九条初が雨に濡れないように、傘の大半を隣の人に向けていた。

冷たい雨が、傘の外に出ている彼女の腕に降り注ぎ、その冷気が毛穴に染み込んで、思わず身震いをした。

建物に入ると、藤堂澄人は九条結衣の体の半分以上が濡れていることに気付き、眉をひそかに寄せた。

エレベーターがゆっくりと下りてくる中、二人はエレベーターホールに立っていた。この時間帯は人通りが少なく、この静寂に九条結衣は少し居心地の悪さを感じていた。

「ディーン——」

エレベーターがちょうど良いタイミングで開き、九条結衣は藤堂澄人の後に続いて中に入った。エレベーターは最上階まで直行した。

小林翔のこのマンションは、このマンション群の最上階にある二階建ての部屋で、眺めが良く、屋上には小さな庭園もあり、とても快適な住まいだった。

最上階に着くと、九条結衣はドアを開け、そこで初めて藤堂澄人が抱いている子供を受け取ろうと振り返った。「ありがとうございます。子供を私に渡してください」

藤堂澄人は彼女を一瞥しただけで、手を動かす様子もなく、九条結衣の横をすり抜けて部屋に入った。

「藤堂さん……」

九条結衣は急いで追いかけ、彼の前に立ちはだかった。「子供を返してください」

藤堂澄人は今回は反対せず、子供を彼女の手に渡した。むしろ藤堂澄人が拒否するだろうと覚悟していた九条結衣は、子供を渡された時、一瞬戸惑った。

しかしその一瞬の後、彼女は九条初を抱いて階段を上がった。

彼女の服は濡れてべたべたし、とても不快だった。雨水が毛穴に染み込み、まだ寒さを感じていた。

子供を抱いて階段を上がった後、浴室で温かいシャワーを浴び、時間から考えて藤堂澄人はもう帰ったはずだと思い、部屋着に着替えて階下に降りた。

数段降りたところで、キッチンから出てきた藤堂澄人の大きな体が目に入った。彼の手には、まだ湯気の立つ生姜湯が入った椀があった。

彼女が降りてくるのを見て、藤堂澄人は一瞥して言った。「降りてきて生姜湯を飲みなさい」

階段に立っていた九条結衣は「……」

手すりに置いた手に力が入り、少し考えた後、彼女は階下に降りた。