九条結衣はメールを開いて丁寧に確認し、その後宮崎社長に電話を返した。
「宮崎社長、メール拝見しました。問題ありません。すべてご指示通りに進めさせていただきます。」
仕事の話になると、九条結衣は自然と夢中になってしまい、足がまだ歩けない状態であることも忘れ、宮崎社長と電話しながらダイニングチェアから立ち上がろうとした。
「はい、すぐに書斎で処理してまいります。」
藤堂澄人は彼女が立ち上がる動作を見て眉をひそめた。九条結衣の足が床に着いた瞬間、痛みで即座に足を引っ込め、バランスを崩して床に倒れそうになった。
幸い、藤堂澄人は彼女の近くに座っていたため、彼女が倒れる前に素早く腕の中に抱き留めた。
九条結衣は先ほどの出来事に驚いており、さらに無意識のうちに立ち上がって歩こうとしたため、捻挫した足に余計な負担がかかり、今は激しい痛みを感じていた。藤堂澄人の服をしっかりと掴み、心臓が激しく鼓動していた。
「結衣、お前の誘惑の手段はますます増えているな。」
頭上から藤堂澄人の歯を食いしばるような声が聞こえ、その声には一抹の安堵感も混じっていた。
先ほど彼は彼女の近くに座っていたものの、彼女が突然立ち上がったとき、もし彼の動作が少しでも遅ければ、九条結衣の転倒は避けられなかっただろう。
九条結衣は今もまだ少し呆然としていた。宮崎社長との仕事の話に夢中になりすぎて、怪我した足のことを完全に忘れていたのだ。
藤堂澄人に抱かれ、その力強い心臓の鼓動が耳に響き、思わず耳まで赤くなってしまった。
「パパ……」
階段の方から九条初の嬉しそうな声が聞こえ、九条結衣は我に返り、何事もなかったかのように平然と藤堂澄人の腕から離れ、階段の方を見ながら言った。「初、ご飯よ。」
視線を戻した時、彼女は一瞬驚いた。九条初の隣にいる小林由香里を見ると、先ほどまでスッピンだった彼女が、今は綺麗なメイクをしていた。
九条初を呼びに行った短い時間で、メイクまでしたというのか?
小林由香里は美しい女子大生で、スッピンでも十分綺麗だったが、今や精巧なメイクを施し、思わず目が離せないほどだった。
女性である九条結衣でさえ、小林由香里の魅力を認めざるを得なかった。
女子大生の清純さに艶っぽさが加わり、かといって社会人女性のような世慣れた感じもなく、まさに絶妙なバランスだった。