九条結衣の怯えた表情を見て、藤堂澄人は苦笑いを浮かべながら「出て行きなさい」と言った。
小林由香里は九条結衣の表情を注意深く観察したが、怒りの色は見られず、彼女の本心を読み取ることができなかった。
でも、藤堂澄人は……
あんなにハンサムで裕福なプラチナ独身貴族、チャンスがあれば誰が諦められるだろうか。
九条結衣は目を閉じて浴槽に寄りかかった。今日は九条初がトレンド入りした件で一日中頭が痛く、やっとお風呂に入って少し楽になった気がした。
浴槽のお湯は心地よい温度で、つい眠くなってしまいそうだった。
藤堂澄人は九条結衣が上階でお風呂に入ってからずいぶん経つのに出てこないのを見て、眉をひそめた。
小林という家政婦が自分と九条初の傍に立ち続け、時々存在感をアピールするのを見て、すぐに眉をひそめた。